
H-D XLCR 1977
GREASE MOTORCYCLE
謀叛を繰りかえす
40年生の見た惑星
この業界には目をきらきらとさせて、本当に楽しそうにバイクのことを語る作り手が多い。古くはすでに70歳を超えた老練のカスタムビルダーに始まり、20代の若手に至るまでと、広範に渡っている。
このXLCRのカスタムを手掛けた鈴木さんもどうしようもなくその類の一人で、話し出した瞬間から氏がおぼれてきた作業の蜜月の時間がありありと思い浮かべられる。
「これは’70年代の日本のジャパニーズスタイルをアメリカ人が真剣に考えた正統進化系(笑)。イメージで言うと当時のカミナリ族です」
また、鈴木さんが50歳を前にして自身へのご褒美も兼ねたカスタムだと言う。「僕自称40年生って自分で言ってるんですけど、ちっちゃい時から見てきた北斗の拳、プロレス、パンクロック、全部詰め込んだやつです(笑)」。
自分の趣味をオールインした大好きな世界観を投影した一台。幼年時代に夢中だったものを忘れるどころかそれに拍車をかけ、大人になった今、純度高く表現する作り手も珍しい。でも、それこそが心から楽しんでカスタムに携わる全てのビルダー特有の目の輝きに直結しているのはもう疑いようがない。
肝心のカスタムである。わずか約3100台しか生産されなかった希少車への敬意を表してフェアリングとガスタンクのみノーマルとし、それ以外は自分好みに彩色。
程よくリアエンドを反り上げた自称『エビテール』は鉄板で成形し、一方、フロントには減衰調整機能付きのXL1200S用フォークを装着。勿論そのままではXLCRに付かないため、イチからステムシャフトが作り直されている。
ノーマルのフェアリングにも当然味付けは必須で、上端をカットした後に風防レザーをあてがい、その上にアルミ棒の縁取りラインで装飾。次に、ガスタンク上面には’60年代のマン島レーサーに倣い、中央に角鋲を配したオーナメントを敷設。丸鋲ではなく角鋲を使ったのは愛するパンクロックへのプライドだ。
また、スイングアームは鉄でワンオフし、前後ホイールは純正モーリスをポリッシュして使用するが、リアブレーキにカワサキZX-10用を流用するなど堅実な走行性も担保。FCRキャブや各所の国産パーツでしっかりと走りに重点が置かれた後に、自称40年生のカスタムが見る者のみぞ落ちをえぐってくる。
「希少車だからって純正を大事にすることはないですね。僕純正信仰の新興宗教いらないんで(笑)。自前のバイクだからこそ全部表現できるんで全てをぶち込んでますよ」
HARLEY-DAVIDSON XLCR 1977 DETAIL WORK
COCKPIT
国産ライザーの径を22mmから25.4mmに切り直して設置。アルミ製のナックルガードが独自の世界観を形成。
FRONT FORK
減衰調整機能付きXL1200S用を採用。フェアリングはXLCR純正を使い、鈴木さんの愛すべきイメージを投影。
GAS TANK
タンクもXLCR純正を用いるが中央を装飾。’60年代のマン島レーサーを情景しつつオーナメントに角鋲を付帯。
ENGINE
オーバーホール後にFCRキャブをセット。外見を彩る各ステーなどの混成なテイストが同店の持ち味となる。
SWINGARM
スイングアームを鉄材でワンオフ。マフラーはエキパイを単一で作り、性能確かなノーマルサイレンサーを接合。
REAR COWL
自称エビテールは鉄材を叩き出して成形、そこにウインカーを装備。シートにもタンク同様に角鋲を取り付ける。
BUILDER’S VOICE
GREASE MOTORCYCLE
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