
H-D FX 1977
VIRTUOSO MOTORCYCLES
手数をいとわない
禅なる白昼のマッドネス
よそのカスタムビルダーとは地金が違う。もっと言えば、次元の異なったところで孤独な創作を続けている。
黙々と、昼夜を問わずに鉄と向き合うその姿勢からはぞっとするほどの張りつめた空気が漂い、長時間に渡って対峙してきた神域から産み落とされるチョッパーは、毎回思わず声が出るほどのインパクトを及ぼして久しい。
東海地方きってのアンダーグラウンドな実力派。自ら率先して表に出ることはないものの周りの玄人衆からの支持は異様に高い、そんなチョッパー屋である。約25年ほど前に製作したこちらは、先日のカスタムショーJOINTSに出展されたものだ。
「これはお店として一番勢いがあるときのチョッパーですよね。まあジョインツの出展に選んだのも他のバイクはもうこすりまくってるし(笑)。あとこれが一番人気なのかな、それとサイドバルブとね」
納車から約25年が経ってもこの綺麗さである。オーナーがいかに大切に付き合ってきたかが瞭然の佇まいだが、一方で、今だに発光し続けているその存在感。
豪傑ひしめくカスタムシーンにおいて、その中に埋没することなく、むしろ年月を経るほどに深みが増す玉肌(ぎょっき)は一級の作り手の証であろう。
ストックフレームのボディバランスの高さを手放しで評価する宮浦さんは、それを加工することなくモールディングで潤色。フレーム全周にリブを立て、そこを赤くライン取り。そしてこのライン取りが最大の見せ場であり、氏が忘我し、夢中になったセクションでもある。
一般的にガスタンクにリブを入れるとなると1、2本が相場。しかしそこに無数のリブを張り巡らし、フレームに立てたエッジとの融和をかんがみてマスキングテープで施工。筆描きなら数時間で終わる所をその何倍もの労力を費やし、また、やっては直しを幾度も繰り返した末に大成させた。
それに合わせ、ディテイルも詰められている。赤のラインが核となるために、エンジンシリンダー、シートのパイピング、各所のボルトにまでその色味を徹底。全体を見渡したときの隙のなさは、宮浦さんのチョッパー製作に対する不屈の姿勢そのものである。
しかし、当の本人にそうした熱さや野心のようなものが一切見受けられないのもまた一興だ。
「しかしほんといろいろ難しいこと聞くよね(笑)。そんなカッコいいものじゃないから。なんだろうね、やり過ぎずやらなさ過ぎずちょうど良いんじゃないですか。まあたまたまですよ、たまたま(笑)」
HARLEY-DAVIDSON FX 1977 DETAIL WORK
FRONT FORK
フォークはFLの6インチオーバーをセット。ホイールやブレーキには汎用品を用い、その分外装を引き立たす。
GAS TANK
タンクに張り巡らせた無数のリブ。そこにマスキングテープを使いライン取り。最も苦心したパートである。
FRAME NECK
メーターケーブルが通る穴で存在感が大きいためクリーンにモディファイ。リブを立てて同様に赤くライン取り。
SEAT
シートの赤いパイピングは外装のライン取りと統一を計ったもの。各所に赤を取り入れることで完成度を増す。
MOLDING
フレーム表面には全周に渡ってリブを立てる。ラベンダーのぼかし塗装とマスキングは全て宮浦さん自身が行う。
REAR END
リアフェンダーもリブドデザインで成形し赤くライン取り。ショートシッシーバーにスクエアテールを装着。
BUILDER’S VOICE
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