YAMAHA SR400 1992
A BEARD
国産車カスタムの雄藩が造る
ガレージビルド・チョッパー
モーターサイクルの世界に身を置いて30余年。バイク販売店『己斐(こい)オートバイセンター』の経営者として多忙な日々を送りつつ、そのカスタムセクションである『ビアード』ではレンチを握りカスタムに勤しむ上田さん。
氏の下で修行した“卒業生”たちが独立してビルダーとして立身していく中、師である上田さんのクリエイティビティもまた衰えることなく、その独創的なカスタムはいつも我々に新鮮な驚きを提供してくれる。
このマシンは、そんな上田さんが10年ほど前に手がけた一台だ。
「中古車仕上げで一台作ることになって、それならショーに出せるバイクにしようと思って店に転がってたいろんなパーツを寄せ集めて作った『ガレージカスタム』ですね」
当時から数々の国産バイクを手がけていたビアードには、カスタムの過程で取り外された様々なパーツが文字通り“転がっていた”という。例えばトリプルツリー。こちらは10度のレイク角がついたドラッグスター250用だ。それを削ってナロードし、ローダウンしたSR純正フォークを取り付けている。
そしてフロントホイールは21インチ化。これらの組み合わせにより、ストックライクだったSRは着実にチョッパー化していく。中でも、最も印象的なのはタンク。こちらはヤマハ・ブロンコ用だ。
「倉庫からいろんなタンクを出してきて、実際に載せてみて、一番しっくりきたのがブロンコ用でしたね」
このタンク、そしてリアフェンダーには一度クロームメッキをかけ、その上からキャンディ・ブラウンでペイント。塗装が施されているにも関わらずミラーのように景色を写し込むユニークなペイントワークである。一方、エンジンは腰上を開けた際にリペイント。クラッチカバーとシリンダーはブラックアウトされ、キャップボルトには差し色として赤を用いているあたりが粋だ。
こうして完成した一台のSR400。プロが作った、ガレージビルド・チョッパーといったところだろうか。
「特にコンセプトは無いんです。その場の発想を組み立ててこの形になったという感じ。どのバイクを作る時もそうですけど、僕はいつも楽しいんです。ワクワクしながら作って、気が乗らない時は一切手をつけない。そんな気持ちで作ってます」
上田さんのカスタムへの熱量、そして高揚感。それがこの快活なチョッパーからも如実に伝わってくる。
(写真・文/マツモトカズオ)
YAMAHA SR400 1992 DETAIL WORK
HANDLE
ハンドルはビアードオリジナルの『クラシックハンドル』。当時からグラストラッカーやボルティ用に人気の品。
FRONT WHEEL
当時エイボンが人気で、それに合うようオフロード用の細めのリム、オリジナルのスポークを用いたFホイール。
GAS TANK
少しふくよかなデザインのブロンコ純正タンクがこのマシンの柔和さを演出。ペイントはシックスシューター。
OIL COOLER
旋盤でアルミを削って作ったオリジナルのオイルクーラー。問い合わせが多く、何セットか販売したと言う一品。
SEAT
シート、リアフェンダー共にワンオフ。シートのステッチは外装に合わせた。シート横のバッグはETCを収納。
NUMBER STAY
以前はサイドナンバーだったが、最近ステーを製作して車検対応に。全体像を壊さぬようデザインには配慮した。
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