HARLEY-DAVIDSON FXS 1983
ASTERISK
ありったけを注いだ
全力オールアルミ祭り
見るからにたいそうな代物である。かつてイギリスのマン島TTを駆けた、ひと世代前の野暮ったいカウルを付けたストリートレーサーをモチーフに、有無を言わせぬオールアルミの外装で仕上げたマシンである。アスタリスクの常連さんが事故を機に、ラフスケッチを描いて来たものをカタチにしたと言う。
「全部アルミで作ったのは、やっぱりチャレンジしたいというのがあったから。FRPでも鉄でもないアルミを素材に使う難しさってあるじゃないですか」と、店主の星川さんは職人気質の飾り気の無さで、4年前に製作した当時の想いを振り返る。
アルミは柔らかい金属材のため加工は比較的楽だが、こと溶接に関しては状況が一変する。熱による歪みが半端でないので、製作工程でのわずかな順番間違えや、ちょっと欲をかいた溶接で取り返しがつかなくなり全てがパー。一からやり直しとなる。しかもたちの悪いことに、修正を試みるほど傷跡が広がるため諦めざるを得ないのだ。そんなわがままボディーを使ってのこの立体的な三次元加工である。もはや氏を前に、下手な相槌はまったく意味がない。
そして、外装を取り付ける部分にも配慮が行き届く。ハーレー特有の振動から、経年劣化での割れが起こるのを嫌い、マウントはネジ留めではなく耐久性を重視したゴム留め。タンクはラバーマウント化されている。
次に、意外と盲点なシフトのリンケージを見てみよう。通常より1本多い、トリッキーな取り回しになっているのが分かるはずだ。これは、ハンドシフトでのシフトアップを手前にしたかったからで、奥へのシフトアップならこの必要は無かった。では、なぜか。それはこのマシンが草ドラッグレースへの参戦を念頭に置いたものだったからで、単純に、その方が素早くシフトアップ出来るためだ。
ミッションがエボリューション以降のリンケージタイプだったことから、一度別のリンクを介して、デザイン性にも留意して仕上げた苦闘箇所である。ちなみにココだけで2、3日注ぎ込んだと言うから、いかにこのマシンに入れ込んでいたかが容易に想像出来よう。
ドゥカティの古い車両からヒントを得たというフレームを彩るアクアカラー。そして、そこに万全と載ったアルミ外装によるフォルムは、狙い通り既存のハーレーらしさを払拭した印象を与える。そんななか、「もうこんなに作り込めないかもねえ」、とポツリ。ダウトである。この次元の物作りをする人間の言葉を、100パーセント信用することなんて到底出来やしない。
HARLEY-DAVIDSON FXS 1983 DETAIL WORK
GAS TANK
アルミ材を使い立体的デザインに成形した難易度の高いワンオフタンク。ネジではなくラバーマウントで固定。
LINKAGE
メカニカルな取り回しのリンケージ。ハンドシフトをスピーディーに行うため通常よりひとつ増やして加工。
REAR COWL
柔らかな曲線を描くリアカウルもアルミ叩き出しで成形。各ピースを溶接で慎重につないで仕上げられた。
MUFFLER
ポップな造形のマフラーは2ストのチャンバーである。この辺の意外な選択は2ストファンの同店ならでは。
REAR WHEEL
ゴールドカラーがアクセントに効くアルミホイールは18インチ。ブレーキローターも同デザインに合わせられる。
NUMBER STAY
背面のステーと言えども一切の妥協は無い。丸棒をアーティスティックに組み合わせた完成度の高い部位だ。
BUILDER’S VOICE
ASTERISK
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