H-D FXS 1981
Groove Works
近づくほどふくらむ
詰めよった多層の差し手
溢れ出るアイデアをひとつのカタチに落とし込み、スマートに変換させた一台のショベルヘッド。巧妙なディテイルワークを持ったカスタムバイクにありがちな全体バランスの不均衡をなんら見せることなく、その着地点は両足をぴたりと揃えて麗(うるわ)しい。
2020年の神戸ニューオーダーチョッパーショーでひしめく強豪をしりぞけ、第3位に輝いた実力は伊達じゃない。作り手の溝尻(みぞしり)さんは、このカスタムはシート下のカンチレバーサスありきで製作したものだと話し出す。
「4速フレームの左右2本のサスを、シート下に1本にしてます。水平近くに持ってきてるんで、垂直に近い状態のモノサスではなくこれはカンチレバーサスと呼んでます」
まず、サスの水平ラインを出すために角パイプの純正スイングアームを2インチ延長。そしてその上に丸パイプを走らせて補強する。曰く、結構力が加わる箇所だからこそ強度をしっかりと考えて製作した箇所とのこと。
更に、その丸パイプの延長線上がまた素敵だ。よく見れば、シート下まで伸びるその丸パイプはいつの間にかオイルタンクのトップラインと同化する。これは、どうせなら表情を付けたかったという氏の軽妙な感性からデザインされたもの。
一方、各部の造形も油断ならない。ハンドシフトやフェンダーのステーは、いったん旋盤で削って成形した部品を、最後に手作業の削りを加えて仕上げている。
「機械で削り出した部品って無機質な気がしてて、最後に手作業の削りを加えることでなんか触りたくなるような、温もりのあるというか、そういう雰囲気を出したくてやってます(笑)」
ステー関係はもちろん、オイルタンクなどのワンオフ箇所に関してもすべてこの処理を施している。徹底して手を入れたカスタムながら、メカメカしさというよりどこか体温の通った気分を感じさせるのはきっとそのためだろう。
他にも見せ場は多角的だ。ハンドルはトップティーに溶接されるが、溶接前にあらかじめ接合部のパイプを仕込んでおき、ハンドルをつなげた後にそれをスライドさせて再度溶接。次に、フロントフォークのリアレッグにはブレーキマスターを移設し、マフラーも英車風のイメージがふと氏に降りてきたことから左右二本出しとした。
一見、その静やかな佇まいからはうかがい知れない痛快な差し手。遠目から塗装でひと目を惹くでもなく、あくまでも接近戦に呼び込み白星をあげるスタンスが一品のたしなみだ。
HARLEY-DAVIDSON FXS 1981 DETAIL WORK
HANDLE
最初にパイプをハンドルに通しておき、トップティーとハンドルを溶接した後にそれをスライドさせて再度溶接。
FRONT FORK
フロントフォークにはVツイン製74スプリンガーをセット。ホイールは前後19-3.5/18-4.0インチとなる。
MASTER CYLINDER
フォークのリアレッグにマスターを設置。レバーを握ると中通しのブレーキワイヤーを介して油圧に変換される。
SHIFT STAY
専用機械で削り出し、最終的に手作業の削りを加えて完遂。この手作業特有の温かみを大切にした作業を行う。
SUSPENSION
モノサスではなくカンチレバー式とした水平基調のサスペンション。これありきでカスタムはスタートした。
SWINGARM
角パイプを2インチ延長し、上のオイルタンクと同化する丸パイプやガセットなどは剛性を確保してワンオフ。
BUILDER’S VOICE
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