ハーレー ショベルヘッド FXS1977のチョッパー

HARLEY-DAVIDSON FXS 1977
CYCLE WEST

December 29th, 2016

フロント23インチ発
唐草模様の和洋折衷

彫師とショベルリジッド。スリリングな響きを持った組み合わせである。この一台には、毎朝電車に揺られる会社員とは相容れない男たちが持つ、一種独特の空気感が漂っているかのようだ。

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のチョッパー

その印象は間違っていなかった。彫師自らがスケッチを描き、可能な限りイメージする世界観を再現したマシンだったからだ。製作は、埼玉のサイクルウエスト。ショベルリジッドの扱いに長けた代表の西山さんは、こちらの質問に分かり易く返してくれた。

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のチョッパー

「乗りたいカタチを明確に持っていた方で、絵が描けるからそれを見て忠実に作っていった。タンクの形状にしても全体感だけじゃなくて、前から見たらこういう感じでとその都度スケッチしてくれる。彫金の唐草模様もオーナーさんの希望した下絵から始まっています」

精緻な図案をプロの手により具現化した一台ではあるが、それだけではとても片付けられない大きなトリックが2つある。まずひとつに、フロント23インチからなるマシンバランス。そして二つ目に、彫金だ。

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のチョッパー

フロント23インチはオーナーの望みだった。そしてこの23インチありきでカスタムは進められてゆく。「どうやったら全体のバランスが上手くまとまるかが大変でしたね。23に合うリアは何だろうって悩んで19インチに落ち着いた。ハイトのあるエクセルシオールのタイヤを履かすための選択です」。フロントはホンダXR250のもので、フロントノーブレーキ以外はこの選択肢しかなかった。そして前後23/19インチのセットアップが決まった上で、ようやくフレームワークと外装加工に移行していったそうだ。

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のチョッパー

お次は彫金である。エンジンとキックカバー、クラッチのプレッシャープレート、タンクの上部と、狙い澄まして入る優雅な唐草模様はもはや晴れ晴れしい。和洋折衷を地で行くアメリカンモーターサイクルと日本古来の技巧の共演は、見事なまでの息づかいで調和を計っている。そして驚くのは、この彫りものを手掛けたのが西山さんの実のお父さんだという点だ。普段は彫金のみならず鍛金、鋳金と幅広い創作活動をし、企業から依頼される仕事の他に個展や展覧会も行う古豪である。こうした通常交わることのない創作家の技巧を、訳なく取り入れられる引き出しも同店の強みであろう。

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のチョッパー

これらメインとなる見せ場の他にも、細部に渡って手間暇かけた作りが施されている。ヘッドライトはこの完成度の高さでボディから成形したワンオフだと言うし、フットコントローラーもサクッと出来る代物でないのは明らか。ステップにしてもローレットの旋盤で簡単に出来るとは言うものの、はたから見ればわざわざ真鍮材から用意した一点物である。

ことさら自分の仕事を主張する人でないのは知っている。しかしそこには、オーナーが身を置く独特の世界感と和洋折衷を調和させるしなやかな腕がある。

HARLEY-DAVIDSON FXS 1977 DETAIL WORK

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のヘッドライト

HEAD LIGHT

FORD用テールランプのベゼルのみ使い、リブが立つかのボディラインからガラスレンズまでをワンオフ。

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のフロントホイール

FRONT WHEEL

フロントノーブレーキを嫌い、23インチで唯一ブレーキのセットが可能なオフ車のホンダXR250用を装着。

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のガスタンク

GAS TANK

オーナーがスケッチした造形を何枚もの鉄板を使い再現。タンク上部には西山さんのお父さんによる彫金が入る。

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のエンジン

ENGINE

来年70になるお父さんの彫金。普段は立体的なものや2m以上の銅板を使った壁面に飾る大きなサイズも扱う。

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のフットコントロール

FOOT CONTROL

ハイマウントのフットコントロールもワンオフ。マスターはFXR用を使う。ステップも旋盤で作った一品物。

ハーレー ショベルヘッド FXS1977のシート

SEAT

彫金と同じにした唐草柄のカービングが入るソロシートは仙台のジミードープが担当。肉厚でホールド性も高い。

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