H-D FL 1942
BREEZE
濃厚に時間を刻む
アルカイックな重奏
オールドチョッパーの扱いに長(た)けた、福島名うてのカスタム屋による’42年式FLである。作り手の服部さんは古くからアメリカのスワップミートに足を運んで経験と感性を研ぎ、いったんそれら現地の空気感を自分の中に落とし込んだ後にカスタムに着手。表面だけをさらうのではなく、今一歩踏み込んで呼吸を整えた上で作業に当たっている。
「今回はアマルキャブを2連にしたかった。それをベースにして、あとはフロント周りを持ち上げて、要所要所にヴィンテージパーツを使ってまとめたいなって。その辺をうまく合わせてチョッパーになるように組み上げたバイクですね」
オーナーが好きなスタイルということで、一緒にしゃべりながら作っていった一台だと言う。さて、まずハイライトのアマルキャブだが、セッティングに関してはさほどの苦労もなかったが、スロットルケーブルの取り回しやマニホールドの製作に時間が取られたそうだ。
「意外とそんなに難しいこともなく問題なく走りましたね。スタイル的には正直あんまりこだわりがない面もあって(笑)。だから何年代を意識してとかそういうのは自分の中にはないのかもしれないですね」
自分が格好良いと思った物がひとつあったとすれば、あとはその周りをどうしていくかを先にまわって考えていく。年代うんぬんで縛るのではなく『合うか合わないか』だけを判断材料にして、パズル形式のように当て込んで身づくろいするのが同店のマナーだ。
そして、そのパーツチョイスが実に芯を捉えている。フランダースライザーやAEE製トリプルツリー、ハマータンク、ジュリアーニ製シートなど錚々たるヴィンテージパーツが顔を揃えるが、それらが単品で浮くことなく落ち着いた調和を見せている。
また、マフラーやフェンダーステーといったワンオフパートの風合いも芳醇(ほうじゅん)で、作り手の腕が存分に注がれたそれらはヴィンテージパーツと違和感なく溶け合い、泰然としたチョッパーの佇まいをふわりと浮かび上がらせている。
「最初はもうバラで来て、バスケット状態みたいな感じで買ったバイクだったんです。それを前オーナーさんがボバー風に仕上げて乗ってて、それからずっと身近な所で車両が回ってるんで思い入れはありますね。来た時から分かってるんで」
現在は新たなオーナーの元でチョッパースタイルに形を変えたアルカイック。姿は変われど、その深部には同店が手塩にかけてきた濃厚な時間が流れている。
HARLEY-DAVIDSON FL 1942 DETAIL WORK
HANDLE
当時のロボハンとフランダースライザーの組合せ。特徴的な造形のトリプルツリーはAEE製をチョイスする。
FRONT FORK
41φフォークはロングチューブで8インチ延長。ライトはベイツ製で、ロックハート製オイルクーラーを設置。
GAS TANK
ガスタンクにはチョッパー乗りの人気が高いハマータンクを装着。左下にはスミス製メーターをセットする。
ENGINE
ストックのナックルモーターにアマルキャブを2連で配備。調整は特別問題なかったと言う。ペグ周りはベイツ製。
SEAT
オーナーが購入してきたジュリアーニ製。ブラックとホワイトの異色のカラーが逆にバイクの雰囲気に合う。
REAR END
英車用の太リブフェンダーをワンオフのステーで支持。同じくマフラーも単一製作したものでシルバーに塗装。
BUILDER’S VOICE
BREEZE
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