ワーカーの肖像　7th　‐ B.W.G ‐

原野に色を添える
ストリートの水仙

国内唯一の純然たるワークウェアメーカーであるBLUCOのライセンスブランドとして2013年に派生した『B.W.G』。BLUCOが作業着としての本分を全うすべく、装飾を省いた無骨なデザインが持ち味であるのに対し、B.W.Gはストリートを意識し、路上でこそ映える華やかな服作りを旨としている。

代表の佐藤さんはこれまで渋谷でストリートに特化したセレクトショップを展開したり、海外の有名ブランドの代理店を務めるなど、シーンを幅広く俯瞰（ふかん）し、その感性を研ぎ澄ませてきた人物だ。

立ち上げから8年が経ち、円熟の香りも漂う今、氏の目にはどんな展望が広がっているのだろうか。ファッションの最前線で闘い続けてきた男の、そのビジョンに迫りたい。

（写真／山田健太郎　文／馬場啓介）

その設立からヒロイックな存在感を放ち続け、バイクシーンのみならずスケーターやBMXライダー、サーファーからも厚い支持を得るBLUCO。質実剛健を地で行く同ブランドの傍らで、華を添えるが如く晴れやかに咲き乱れるのが『B.W.G』だ。

代表の佐藤さんは、熱心なカスタムファンが一目置く鹿児島『スワロウテイル』がスクラッチビルドしたナックルヘッドを日常的な足とする生粋のモーターフリーク。一般的に溶接を始め、加工難度が高いとされるアルミを主体に構築された美しきチョッパーだ。

都内をひらりひらりと舞うように駆け抜けるその姿に、ストリートを標榜するB.W.Gの軽快なウェアは良く映える。物作りの確かさはBLUCO譲りにして、さらに加えられた豊かな色彩感こそが同ブランドの真骨頂なのである。

「B.W.GそのものがBLUCOの“差し色”という立ち位置なんです。シンプルなワークスタイルで無骨にまとめるのもいいですが、そこにグラフィックやデザインに拘ったウチのウェアを選択肢に加えてもらって個性を出してもらうというコンセプトです」

「昔、チャーリー・セクストンっていうギタリストが出ていたBOBSONのジーンズのCMがカッコよくて、それを見て服に興味を持ったんです。それからどっぷり古着にもはまって。だからやっぱり背景にはいつもアメリカがありますね」

長年ファッションに携わってきた佐藤さんは多方面に太いコネクションを持っており、様々なアーティストを起用したコラボワークが多いのもB.W.Gの特徴のひとつ。絶えず吹き込む新しい風が、枠に捕らわれない自由な発想での服作りを加速させる。

未知に構えることなく、そこに飛び込む心意気を佐藤さんは自然と持ち合わせている。愛機の納車の際には初めて乗るナックルにも関わらず、なんと鹿児島から東京まで自走で帰ってきたと言うのだ。しかも道中、雨に降られながらである。

「予報を見て晴れの続く日取りを選んだんですけど、現地の波が良くて。何日かサーフィンを楽しんで、もう戻らないとって時には大雨です（笑）。そんな過酷な出会いでしたけど、今ではこいつイコール自分みたいに感じるくらい馴染んでいます」

B.W.Gを象徴するアイテムのひとつに、子供を安全にバイクに乗せるため細部にまで拘り抜いてデザインしたタンデム・ツーリングバッグがある。これは、子供の習い事の送り迎えも二人乗りでこなすほどに日常にバイクが溶け込んだ氏だからこそ作り得た逸品だろう。

「ワーク、モーターサイクル、サーフ、そしてスケートを4本の柱とするB.W.Gの在り方はこれまでもこれからも変わりません。流行りすたりには寄らず、もっと根幹の部分にあるストリートカルチャーに沿った服作りを続けていきます」

広くシーンの大局を見てきた男が肌身をもって体感し、辿り着いた境地。欺瞞（ぎまん）にまみれた上っ面には迎合せず、ただ自分の信じるままに実直に育んできたストリートの翼は、路上に吹く風を大きくはらんで飛翔し続ける。

B.W.G