H-D FXE 1975
MOTORI GARAGE

震えて点滅する
真夏の打ち揚げ花火

仙台近辺のチョッパー乗りがふらりと訪れる頼りのショップと言えば、『モトリガレージ』が正解だろう。伝統的なチョッパー屋に見られる若干ハードな雰囲気はここにはなく、胸襟（きょうきん）を開いた空気感が今日も澄み渡った空によく溶け込んでいる。

そして、得意とするスタイルは今回も貫かれている。店主の鳥居さんとメカニックの志賀さんの二人が織りなすチョッパーはいつ見ても眺めがいい。それは、余計なことをしない分車体バランスの黄金比が保たれているからで、今や東北エリアの中でぽっと明るい光を放つ存在だ。

力まず、自然に工作されたオールドスクールなチョッパーは、3つのポイントを押さえて着手されたもの。フロントフォークとガスタンク、シッシーバーがそれで、それ以外はいつもの同店が持つ、てらいのないカスタムマナーにのっとって構築された。

「このちょっと長い74スプリンガーだけ最初にあって、それだけ決まってました（笑）。あとはこのタンクを使いたいみたいな話と、長めのシッシーバーですか。オーナーから結構写真をもらってて、わりと一貫性があったのでやりやすかったですかね」

フロントは4インチエクステンドされたスプリンガー。またタンクは、メカニックの志賀さんがプライベートで乗る愛車に付けてた物で、それを気に入ったオーナーが譲り受けたものだ。この辺の風通しの良さがモトリガレージのカラーで、敷居がフラットなため意思疎通も円滑である。

一方、ハンドル位置より高いのは久しぶりに作ったと話すシッシーバーは、六角棒を素材に成形。リアのリブフェンダーは、シートを載せる箇所に逃げを作った後にメッキ処理。その下に隠れた丁寧な配線処理も見逃せない局部だ。

「配線はどのカスタムでも綺麗にやってます。なんかちゃんと製品ぽいじゃないですか（笑）。あとウチらにとって修理もしやすいようにですよね」。更に、エンジンには1340ccのクランクを用いてセットアップ。外観だけに留めず走りの改善も計っている。

仙台の泉区から次々に送り出されるオールドスクールのチョッパー。それは、真夏の空に舞う花火のような依存性がある。震えるような大きな音を立て、まっすぐに空へと打ち上がり、炸裂し、光る。点滅しつつ尾を引き、落下し、夜に溶けて、消える。

その鮮やかな閃光には、後を引く余韻だけが残る。次はまだかな。そんな期待に応えて、現場の二人は素知らぬ顔で次の一手に火を付ける。

HANDLE

曰く、ハンドルはどこにでも売ってるミディアムエイプバーとのこと。このチョイスが同店のブレない改善作法。

FRONT FORK

純正っぽくもXAスプリンガーの雰囲気も漂わせた4インチロングの74スプリンガー。ライトはベイツレプリカ。

GAS TANK

タンクはメカの志賀さんが愛車に付けていた物を譲った分。グラフィックがシンプルな車体のアクセントに。

OPEN PRIMARY

幾度も手掛けて来たこなれたプライマリー周り。市販の操作系とペグマウントステーなどの一品物を組み合せる。

MUFFLER

フロントはパウコ製でリアは角度がいまいちだったためワンオフ。エンドはレプリカのカクテルシェイカー。

TAIL LIGHT

汎用ルーカステールのマウントプレートは単一製作。リブフェンダーはシート逃げを作りメッキ処理したもの。