KAWASAKI 250TR
A BEARD
事もなく
気付けば天井のかなた
カスタムベースに選んだのは、カワサキ250TRである。かつて人気を博したTWやFTRなどの『ストリートトラッカー』の流れを汲んで生まれたモデルを、ヴィンテージの要素を取り入れて雰囲気を一新。手掛けたのは、この手の国産車の扱いに長けた広島のビアードだ。
「バイクに名付けたEroina(エロイーナ)の意味? これはイタリア語で華麗な、とかそういう意味です。英語だとヒロインだけど、そうすると麻薬のヘロインとかがヒットしちゃうからイタリア語にした。まあ、なかなかいい名前だなと(笑)」
なかなかフックのあるバイクネームをいつも通りにこやかに説明してくれた代表の上田さんに、続いてカスタムのコンセプトについて話を振ってみた。
「これはとりあえずフロントにスプリンガーフォークを付けてみたいなと。そこから始めて、作りながらデザインを考えていったバイクですね」
なるほど、ハーレー用の74スプリンガーフォークありきである。そして意外だったのが、その取り回しの軽さだ。往々にして重量のあるスプリンガーを装着するとハンドリングが重くなってしまうものだが、その傾向はなんら感じられなかった。なぜか?
「そのままディスクブレーキを付けると、ブレーキをかけた時に前に出ちゃうんでトルクロッドの位置を計算して上にあげたりしてる。あとホイールもTRの純正が付けれるようにフィッティングを換えたり。基本的に軽い物を付けてるから取り回しもラクですね」
次に、外装周りに目を移そう。タンクには市販のピーナツタイプを使い、位置決めの際は仲間に写真をラインするなどして相談。盲目的になることなく、広く意見に耳を貸してベストな選択をとっている。そしてヴィンテージ感を醸し出す、ハンドル周りやエンジンに加えたブロンズメッキもまたポイントだ。
各部位に銅メッキをかけて、その上に黒のパウダーを塗布。そこから角をうっすら磨いて出したこの独特の風合いが、最終的なゴールに向かって見事なアシストをしている。ならば、ここで締めの質問を試みたい。
「見せ場? シートの後ろの丸みのところかな。指で押すと非常に気持ちが良いんですよ。でもあまり押すと傷むんで、ノープッシュシートって名前を付けてます(笑)」
果たしてどんな奮闘箇所が飛び出すかと思いきや、まさかのウィットに富んだコメントである。この、『スパーン!』といきなり繰り出される背負い投げには、とうてい受け身は間に合わない。
KAWASAKI 250TR DETAIL WORK
HANDLE
ハンドルはビアードのオリジナル商品。ライザーやトップブリッジは色褪せた風合いのブロンズメッキ処理。
FRONT FORK
74スプリンガーありきでカスタムはスタート。製作していく過程で全体のデザインを決めていったそうだ。
GAS TANK
市販のピーナツタンクを、入念な位置決め後に装着。中央の銅パイプはあくまでデザインの一部、飾りである。
SEAT
後端のちょうどプリッと盛り上がった部分が、触ると気持ち良いという箇所。その名もノープッシュシート。
ELECTRIC BOX
電装ボックスにスイッチを収納。全体のバランスと合わせたサイズ感で作製し、シックなカラーリングでまとめる。
MUFFLER
動きのあるマフラーはステン材を使った一品物で、エンドにアクセントのスリット入りアルミキャップを設置。
BUILDER’S VOICE
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