KAWASAKI Z-LTD 1979
CROWS PERFORMANCE

単体ではなく風景で語る
押し合ういにしえのメグロ

この車両を紹介する前に、まず家主の澤村さんの活動について触れておく必要があるだろう。『クロウズパフォーマンス』のある那須烏山市は、後年カワサキモータースに吸収合併されたかつての『メグロ』の工場があった地である。その史実を受けて現在、氏は町おこしプロジェクトの中枢に参画し、1949年製メグロZ号のレストアに携わっている。

「那須烏山市の商工会の工業部でレストアプロジェクトというのを発足しまして、いま進行中というところです。今年2023年からスタートして一応3年計画ということで2025年の完成を目途に進めているところです」

先人への敬意を起点にして、地元への想いや誇りといったプリミティブな感情が合わさり動き出した偉功の計画である。そうした『メグロ』への並みならない情熱を注ぐ澤村さんが手掛けた一台には、こんなテーマが筋書きされた。

「日本製のカフェレーサーのように見えるようにしたいなと。それでいま町おこしでメグロの再生に取り組んでいるものですから、その雰囲気を落とし込んで周知したいというのでトライしています」

メグロの可能性を多くの人に伝えたいという願いも込めて製作したものだと言う。また、より踏み込んだシナリオには、「もし、吸収した母体のカワサキモータースが1979年製Zをベースにして当時メグロ色の強いモデルを発表していたら」という、仮想現実的な作り手の夢もたっぷりと内包。いくつもの感覚がたがいを押し合いながら、何かしら静かでよどみない回転のなかに次々と浮かんでは消えてゆく。

全体のシルエット的には、フロントからリアへと流れるラインが麗（うるわ）しい適確なカフェレーサーのそれである。ガスタンクにノーマルを用い、そこからの量感がリアにつながるようシートカウルをアルミで創作。そして、前後に18インチのモーリス製復刻ホイールを合わすが、タイヤ径が160と太めのためスイングアームをPMC製丸鉄タイプに換装。塗装はゆかしさのあるトーンでまとめ、ワンポイントに『黒渦モータース』のレタリングが添えられた。

「もしメグロの色が濃く残っていたらこういうのがカワサキさんから販売されていたのかなと空想して作ったバイクなので、その場合はうちのショップ名もクロウズのアルファベットじゃなく漢字だったのではという考えですね」

ディテイルへの詰めも一貫している。自分の腹の中でちゃんと温もりのできた言葉は、その言葉ひとつひとつに確信の入った重みがある。

HANDLE

ハンドルはカフェスタイルに必須のセパレートをセット。トップブリッジはノーマルを加工して装着する。

FRONT FORK

純正フロントフォークを採用し、ドゥカティ製ブレンボキャリパーを設置するためにボトムケース側を改良。

FRONT WHEEL

ホイールはリア共に18インチのモーリス製復刻ホイールを選択。ゴールドカラーが全域の黒色に映えている。

MUFFLER

味わい深いサウンドを奏でる4気筒マフラー。既成のショート管をベースにして後方部をリメイクして配備。

SWING ARM

太めのタイヤチョイスで干渉するためスイングアームはPMC製丸鉄タイプに換装。ショックはナイトロン製。

SEAT COWL

ガスタンクからのラインに配慮してシートカウルはアルミでワンオフ。FRPシートベースに本革が張られる。