
H-D FL 1947
STANCE
時代技法にまでこだわった
純粋なオールドスクール
洗練された純正ハーレーダビッドソンに対し、個人的な野趣を盛り込むチョッパーを「純粋」と形容するのもいかがなものかと思うが、見れば見るほど、知れば知るほどに「純粋」を感じてしまうナックルのチョッパー。
「こんなパーツを使いたいというお客さんの意思が結構あったんで……」と『スタンス』の山田さんは静かに語りだす。さぞやカスタムシーンを知り尽くしたオーナーなのかと思いきや、ハーレーに乗るのがはじめてという50代の男性だ。
米を卒業すると書いて「粋」。若いころと違い、欲を満たすために安価なものをガツガツと貪るのではなく、高くても好きなものを少量じっくり堪能するのが「粋」を知るミドルエイジ。
いま『スタンス』では、ヴィンテージカスタムをオーダーするミドルエイジが増えているという。
ただでさえメンテナンスが気になる旧車だが、オーナーは乗るたびに繰り返すこととなるエンジン始動に懸念を覚える。
「キックでは不安だから、セルをつけて欲しいとオーダーがありました。だからせっかくのオールドスクールな見栄えを損なわないように、W&W製のキャノンボールステルススターターをつけたんです」
いらないものは削ぎ落としてこそ、チョッパー。いや、必要なものさえも存在しないのがチョッパーの真髄。
純正ナックルに、そもそもセルモーターという設定はない。しかしエレクトラグライド以降、つまり’60年代に入ってからのハーレーにはセルモーターが標準装備となった。
このチョッパーは’60年代のカスタムシーンに多く見られたスタイル。当時なら、セル設定のない旧車にアフターパーツが取り付けられていても不思議はなく、’60年代スタイルを踏襲するならセル付きナックルに違和感を覚えない。
しかも最新のセルモーターなのでプライマリー側への取り付けではなく、キック側なので完全にその気配を消し、ステルス化している。
一方、ガスタンクはエンジンに次いでオートバイの顔となる部分。そこにはアイアンクロスの造形が1センチくらい浮き上がる。
「プレスでも同じようにできるけど、ちょっと雰囲気が変わっちゃう。やっぱりオールドスクールな方法となると鉄板を切り抜いて、横の部分を全部作って……」とわざわざ手間のかかる手法を用いた。
どんな方法でもきっと見た目には変わらずに作れる。しかし作ったビルダーの気分が変わってしまうのだ。目に見えない心意気。純な粋が、そこかしこに散りばめられたチョッパーだ。
(文/野上真一)
HARLEY-DAVIDSON FL 1947 DETAIL WORK
HANDLE
フランダースのレプリカライザーに取り付けたスタンスオリジナルバー。パンチンググリップはナイス!MC製。
HEAD LIGHT
‘60年代のチョッパーシーンを彷彿させる2段ヘッドライトは、ワーゲンなどに使われている汎用のバックランプ。
GAS TANK
見所となるアイアンクロスが1センチほど浮き上がるガスタンク。どのように作るか。その心意気で価値は高まる。
ENGINE
エンジンからオイルタンクにかけて、黄色味を帯びたメッキパーツ群。当時の雰囲気をもつニッケルメッキで処理。
SISSY BAR
ツイストを入れたシッシーバーはワンオフ。アイアンクロスもこのためにデータを作り、レーザーで切り抜き作成。
MUFFLER
若干のカチ上げを見せるマフラーは出口でターンアウト。リアタイアは16インチのファイアストンを装着。
STANCE
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