
KAWASAKI W650 1999
ECCENTRIC MOTORCYCLE
刻一刻とうねり出す
変電されたTTトレイシー
巧緻な作り込みやアバンギャルドなデザインを宝刀にたずさえ、国産系カスタムシーンの先端を我が物顔で乱舞する様(さま)はもはや独壇場の様相を呈している。
エキセントリックモーターサイクル。いまどき、規格外なドメスティックカスタムの雄として、一段高い上座から振り落ろされる真剣の威力はひとたまりもない。
カワサキW650がベースの一台。始まりは、オーナーから持ち込まれたオールドトライアンフのTTレーサーの写真で、その全体を覆ったトレイシーボディの特製に力点を置いてカスタムは動きだす。
ボディありきのプロポーション。まずはトレイシー固有のボリューム感が出過ぎないように気を配り作業に当たるが、その際、リアサスのマウント位置がそのままでは幅がボテっとするため内側に寄せて加工。可能な限りこの部位が膨らまないように整合された。
「トレイシーボディは鉄の鈑金です。どうしても歪(ひず)みと強度的な問題が出てくるんでいろいろ考えて、パートパートで鉄板の厚みを変えたり。何もない状態から作ってくのは大変だったんでまずはタンクを決めてからでしたね」
ガスタンク位置を決めて、両面のアールを描いた鉄の丸棒の流れをそのまま受け継いでリア周りのアウトラインを形成。
それをガイドにして叩いた鉄板を貼り合わせていくといった正道な手法で外装を肉付けするが、鉄板はすべてを分厚くすると重く、整備性が悪くなるので各所で板厚を変更。シート座面は厚く、両サイドは丸みを付けることで強度が増すため薄くと、臨機応変に対処した。
一方、根本的にボディワークがメインになることで骨格には手数を入れず、逆に足周りを熟考。ノーマルの楕円型スイングアームでは不格好なため丸型のSR用を取り入れ、ホイールベースを詰めてよりトラッカーライクなスタイルに落とし込んでいる。
次いで、元々ディスクブレーキの所をSR用ドラムハブを使いHリムを組むなど、雰囲気作りの徹底にも余念はない。
また、アマルキャブレターの登用も、カスタムに抜き差しならない態度で挑む作り手には外せない箇所。キャブ自体がコンパクトなため、取り付けたときの周囲のスカスカな空間演出が最大のメリットで、エンジン単体の存在感にもより拍車がかかる。
計算と経験で形象化させたトレイシーカスタム。そこにギミックや奇策があるわけではなく、あるのは、正攻な手仕事を支えるカルト的焦熱と、同じ熱度を保持した降ってわくアイデアの変電である。
KAWASAKI W650 1999 DETAIL WORK
HANDLE
ハンドルは交友の深いリバタリア製を選択。ライザーは純正をスムージング後にポリッシュ。グリップは紫色を。
FRONT FORK
純正フォークをスムージング。ライトはスクエアタイプを2連でセット。三つ又の前側にメーターを埋め込む。
GAS TANK
メインのトレイシーボディに合わせてタンクを創作。アールを描いた丸棒の中にリボンのグラフィックが入る。
SEAT
オーナーの希望を完全に具現化。上質な装いのアイボリーのボタンダウンと紫のモケットからなるオリジナル。
SWING ARM
丸型のSR用スイングアームを使いわずかにショート化。ナンバーステーは丸棒ではなく敢えてのアルミプレート。
REAR SUSPENSION
ボリュームのあるトレイシーボディをスマートに見せるためショック位置を変更。可能な限り内側に詰めた。
BUILDER’S VOICE
ECCENTRIC MOTORCYCLE
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