H-D FX 1973
TINY OLD MAN
フォーマットを崩さない
両面待ちのハードラー
京都府宇治の山奥で、ごくひっそりと活動するカスタム屋だ。立地的に知る人ぞ知るどころか、知っていてもなかなか足を運ばないようなその静かな地で、店主の鳥居さんは周りの環境とは似つかわない百味なカスタムを日々練磨している。
ボバーである。しかし、そもそものスタートラインからハンディキャップがあったことを追記しておきたい。オーナーが約5年眠らせていたチョッパーをベースに、ボバースタイルにしたいという依頼で始まったカスタムだが、蓋を開けてみればフレームに問題が潜んでいた。
「知らんかったんすけど、フレームが1インチパイプのチョッパーフレームだった。でもこれでやろうって言ってしもうたし(笑)。だからこれどうやって3.5ガロンタンクを載せようかってところからですね」
カスタム屋の店主にはイレギュラーのケースがつきまとう。最初からパーフェクトにお膳立てされた作業の方が珍しく、何かしらの問題をかかえた車両を前にして、そこから初めてオーナーの希望を形にしていく。
しかしそこが腕の見せどころでもあり、別の選択肢に安易に逃げることなく受け入れる姿勢こそが、できるカスタム屋の分かれ目だろう。
骨格が細ければボリューミーなボバースタイルを作るのはひと筋縄ではいかない。スッキリし過ぎたネック周りをうまく隠すように3.5ガロンタンクを設置するが、もちろん装着にあたっては元々無いマウントタブを製作し、タンクが干渉しないようフレームの『逃げ』のプレスも用意。
そしてようやく、全体の均衡をとったこれ以外ない箇所にピンポイントで装着されている。
半面、オイルタンクの右側にはイグニッション&スイッチを収納し、真鍮のマフラーエンドに気付いて尋ねてみれば「ふと思いついてやってみたんすよ」と、ひけらかさないのも氏の定型フォーマットだ。
更に、ヘッドライトのマウントや上下マフラーをつなぐリベットステーといった細工も、同店ならではの精緻な、溶接で造形化したパートである。
特有の諸芸はまだまだ終わらない。フロントに付けた英車BSA用のドラムブレーキや、今では希少なアエルマッキから頂戴した左右ステップ。’20年代のオールドカー用ルームランプを使ったテールレンズと、四方に張り巡らされた引き出しからの通(つう)なパーツチョイスがカスタムの『格』を増進。
このモーターカルチャーに狂恋した長年の知見が、どの強者の中にあっても存在感を放つ、勝利への手形である。
HARLEY-DAVIDSON FX 1973 DETAIL WORK
HANDLE
純正分割タイプを使いワンオフしたオフセットライザー。トップにブルーリフレクターを付けハンドルを装着。
FRONT BRAKE
前後19/16インチホイールのフロントには英車BSA用をセット。鳥居さん曰く、結構昔から使うパーツとのこと。
GAS TANK
左からは青く、右から見た時には白い車体を考えエイジング塗装。ガスキャプに車用ラジエターキャップを使う。
OIL TANK
オイルタンク上側にイグニッション&スイッチを収納。上下マフラーをつなぐステーにリベットを一つずつ溶接。
MUFFLER
マフラーはディンプルパイプを用いたミッドハイ仕様。エンドには思い付きで真鍮エンドキャップを付帯した。
SISSY BAR
銃剣を配備したシッシーバー。テールレンズは1920年代のオールドカー用ルームランプでボディはワンオフ。
BUILDER’S VOICE
TINY OLD MAN
住所 | 京都府宇治市炭山滝ノ元14-2 |
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電話 | 0774-84-6240 |
FAX | 0774-84-6240 |
SHOP | TINY OLD MANのショップ紹介 |
営業時間 | 12:00 ~ 20:00 |
定休日 | 水曜日 |