H-D XL 1200S 2003
SUN MOTORCYCLES
若きオーナーが駆る
軽快なダートトラッカー
天衣無縫。
天人天女の着物には縫い目がないということから、よけいな装飾がなく技巧などの形跡もまったくない様相に用いられる四字熟語だが、このスポーツスターを一見した時に思い浮かんだ言葉でもあった。
ライダーが跨った姿を想像しても、エイプハンドルのグリップ位置とシート、ステップの関係性で成り立つポジショニングはリラックスした自然体そのもの。カスタムにやりすぎたところが見当たらず、ストックにこのモデルがあるのではないかと思ったほどだ。
しかし目を凝らすと、わざとらしくなく仕立てられているだけであって、手を入れた形跡がいくつも見られる。
広島市に工場(こうば)を構える『サンモーターサイクルズ』は、2007年に創業したカスタムショップ。以前に店主の立岡さんは「お客さんのこだわりを受け入れるスタンス」と話していたこともあるが、今回のカスタムもオーナーが持ってきた写真をもとに、そのコンセプトが決定された。オーナーは驚くことに、まだ20歳前後という。
しかしこの1200Sには、天衣無縫どころか切り刻んでは貼り合わせ、随所にカスタムが施された。ダートトラッカーを彷彿させるアップマフラーはタイトに絞り込まれ、シリンダーの際々を通過していく。そしてライダーのふくらはぎを過ぎたあたりから外側へと膨らみはじめ、マフラーエンドには極々小さな装飾が施される。
悪路を軽快に走れるリアタイヤのクリアランスを確保した上で、リアフェンダーを少し深めに加工することによって『走れます感』を隠し、チョッパーとしての絶妙なバランスを形成。
ノーマルはフロント19/リア16インチのキャストホールだが、フロント21/リア16インチのスポークホイールに変えることでオフ車らしさを具現。この嫌味のない作りで、万全のスタイルに仕上げた。
「軽い感じで作りたかったんですね。ブーム的なものにちょっと寄っている部分もあるのかな」と立岡さんは語り始め、「作りやすいというか、作っていても面白かったですね」と続ける。
ダートトラッカーでもあり、ストリートっぽさもある。それでいて流行に完全に寄りかかっているわけでもなく、個性的でもある。今後もオーダーがあれば作っていくし、オーダーがなくても推していきたいという完成形となった。
「ハタチ前後くらいの子たちがバイクに乗ってくれるのは嬉しいな」と、立岡さんは頬を緩ませる。人柄に飾り気がないビルダーそもそもが、天衣無縫である。
(文/野上真一)
HARLEY-DAVIDSON XL 1200S 2003 DETAIL WORK
HANDLE
自然体でいられるポジショニングを形成するエイプハンドル。ガスタンクは汎用のピーナツタンクを装着。
FRONT FORK
フォークのほかステップ周りやバッテリーケースなど、ストックのままにすることで自然な設えに仕上がる。
FRONT WHEEL
オフロードタイヤを装着したフロントホイールはキャストからスポークへ。19インチから21インチへと変更。
MUFFLER
トラッカーを意識した2本出しマフラーはストレートではなく、曲線的ラインをたどってタイトに作り込んだ。
SEAT
シートはマットな質感でタンデム仕様となる。シートレールはループ加工を施し、ダートレーサーの雰囲気を醸す。
REAR FENDER
オフ走行可能のクリアランスを確保しつつ、フェンダーを深めに確保してチョッパー的なエッセンスを加えた。
BUILDER’S VOICE
SUN MOTORCYCLES
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