YAMAHA SR400 1997
SUN MOTORCYCLES

大空の蒼さを跳ね返す
ストロベリー・タイガー

なんとポップで快活な一台だろう。名古屋開催のカスタムバイクショー『ジョインツ』でこのマシンを一瞥したとき、同じ思いを抱いた諸兄も少なくないだろう。カスタム製作は広島の『サンモーターサイクルズ』。若い世代を中心に支持を集めている、アメリカン系を得意とするカスタムショップである。

「オーナーは女性で、SRのB級チョッパーに乗りたいって事でうちを訪ねて来られたんです」と、店主の立岡さん。実はカスタムがスタートする前、ここまで手の込んだスタイルにする予定はなかったのだと言う。流れが変わったのは、オーナーのある要望だったそうだ。

「色をピンクにしたいって言われたんですよ。それならガッツリ作り込んだ一台にしようって話になったんです。色が決まってから計画がガラッと変わりましたね」。オーナーは様々なB級チョッパーの写真を資料として持ち込み、立岡さんはそれを咀嚼しながら製作に勤しんだ。

「シート位置を下げたかったので、まずはフレームをドロップさせるために後ろの部分をカットして。タンクのエンドあたりからシート下まで少し下げたあとに、リアに向けて少し上がる感じのラインで作りました」

フロントエンドは基本的にストックを用いつつ、15cmほどのジョイントを用いてロングフォークに。ドロップしたフレーム、ショートサスでローダウンしたリア周りと相まって、ストックのスタイルを呈していたSRは一気にチョッパー然としたスタイリングに昇華された。

タンクは汎用のピーナッツタンクをチョイスした。「SRはオイルインフレームなのでフレームが太いんです。それを逃がしつつ、マウントをどういう感じにするか……そのあたりは苦労したポイントですね」。

また、艶やかな車体色もこの一台を語る上で欠かせぬ要素だ。

「オーナーさんは色味にもこだわりがあって。相談して、明るすぎず、少し落ち着いたサーモンピンク風の色味に決まりました。参考で見せてもらった映像のバイクは全てがピンクだったんですけど、それだとちょっとキツい印象だったんですよね」

そこで立岡さんは、ステップのブラケットやスタンド、ステーなどをクロームにすることで差し色として均衡を計っている。

SRらしさを随所に残しつつ、注文通りのB級チョッパーに仕上がった一台。このマシンが夏空の広島の街を駆ける姿は、なかなかに痛快なものだった。

（写真・文／マツモトカズオ）

HANDLE

ハンドルはエイプをベースにセンター部分で幅詰めし、アール部分は若干絞っている。ライザーはストック。

GAS TANK

車体色のピンクと同じくオーナーがこだわったのがタンクの虎柄。パターンは数種類提案して選んでもらった。

MUFFLER

マフラーはオーナーの希望でドラッグパイプを製作。ストレートな軌道を描きつつ、若干ターンアウトさせた。

ELECTRICAL BOX

電装ボックスはドゥカティのサイレンサーから造ったという無二の逸品。左側にイグニッションを配している。

SWING ARM

スイングアームまでも鮮やかなピンクカラーに染めつつ、各所にクロームを残すことで車体にメリハリを付けた。

SISSY BAR

グラブバーを兼ねたデザインがユニークなシッシーバー。テールランプのS字型マウントも遊び心を感じさせる。