H-D FL 1946
J’BOX
往年の名マシンを連想させる
目抜きのクラフツマンシップ
昨年末の横浜ホットロッドカスタムショー。件のウイルスにより中止となった前年のフラストレーションを晴らすかのように、全国から珠玉のマシンたちが集った。そんな猛者たちの中でも、この一台を強烈に覚えている方も多いことだろう。九州は佐賀からエントリーした『J’BOX』製作のナックルヘッド・カスタムである。
「オーナーさんからの注文は、『ロッカークラッチでジョッキーシフトのナックル』。あとは完全にお任せで作らせてもらいました」と、回想するのはビルダーの津隈さんだ。
「最初に作ったのはマフラーです。2in1でエンド部分はオーバルっていうのを決めて、そのマフラーをあんまり主張させたくなかったので、次のオイルタンクはマフラーを半分隠す形で作りました。シート下がメインタンクで、その下にあるのがサブタンクになっています」
マフラーが最初という意外なスタート地点。「思いついたところから作って、作りながら次を考えるんですよ。ちょっと変わってますよねウチは」と、氏は笑う。
意外にもアンカットだというレプリカフレーム。それを感じさせないのは、枚挙にいとまがないほどに作り込まれたパートの数々だろう。
その中で筆頭に挙げるべきはフロントエンド。ワンオフのガーターフォークは走りに直接的に関わる部分であることから、溶接時の歪みに気を使いながら製作したという。サイドをパネル状にしたデザインは、ピンストを入れることを前提にした選択だ。そしてヘッドライトを埋め込んだフェアリング然としたフロントパネルが、このマシンの『顔』として強烈な印象を発している。
また、このマシンの存在感をより高めているのが黒/金のペイントワークだ。現在40代後半以上の元F1少年ならばきっと、懐かしいJPS(John Player Special)ロータスのマシンを思い起こすだろう。それをオマージュしたJBS(J’ Box Special)の文字とピンストライプは熊本のピンストライパー&ペインターのORVIS ONEが手がけている。
意外にもJPSをペイントに取り入れることはカスタム終盤に決まったというが、車体各部の直線と曲線とが融合したスタイリングは当時のF1マシンと符合する点も多く、偶然の産物とは思えぬシンクロニシティを感じさせる。
前衛的なメタルワークと’70~’80年代のノスタルジーとが融合したこのマシンは、横浜でベストモーターサイクルアメリカンのアワードを受賞し、遠く九州から全国へとその存在を轟かせたJ’BOX。今から既に、次作への期待を禁じ得ない。
(写真・文/マツモトカズオ)
HARLEY-DAVIDSON FL 1946 DETAIL WORK
HANDLE
レーシーな車体に合わせたナローなワンオフのドラッグバー。メーターパネルはアルミとスチールで製作された。
FRONT END
角目ライトが埋め込まれたパネルに『JBS』の文字が映える。スクリーンはCB92のものをイメージしてデザイン。
GAS TANK
ドカティMHRをイメージした段付きのタンク。全長を2インチ伸ばしてフレームを覆い、幅も調整している。
OIL TANK
フレームのラインに沿うようにデザインされたサブのオイルタンクには冷却を考えて前後にダクトを設ける。
TAIL LAMP
ワンオフのテールランプはC1コルベットの『レディネイル』と称されるテールランプをイメージして製作。
REAR END
アシンメトリーなリアフェンダーと、リアのムーンディスク。ビルダー津隈さんのお気に入りのパートだ。
BUILDER’S VOICE
J’BOX
住所 | 佐賀県小城市芦刈町三王崎273-5 |
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電話 | 0952-20-1626 |
SHOP | J’BOXのショップ紹介 |
営業時間 | 10:00 ~ 19:00 |
定休日 | 不定休 |