BMW Motorrad R100RS 1984
APOLLO MOTORS

往年の主翼から分化した
香味を増すスクランブラー

1976～’84年の間に生産されたBMWの『R100RS』。名前に、往年のBMWレーサーと同じ『RS（Renne Sport：レン・シュポルト）』のネーミングを冠したかつてのフラッグシップで、当時、大型のフェアリングの採用で欧州のバイクシーンを賑わせたモデルである。今回はその由緒ある空冷OHV2気筒がベースだ。

手掛けたのは、東京足立区の『アポロモータース』。この道30年以上になる手練れのメカニックである鈴木さんの手にかかればかつてのフラッグシップも意のままである。また、長年正規ディーラーの第一線に身を置いてきた氏は、オートバイとしてのスポーツ走行の旨味を最優先にして料理するのが決まったルーティンだ。

「今は中古のマーケットで一番RSが多いので、最初からカウルを外す方向で手に入れてスクランブラー風にカスタムしてます。あとは都内で仕事の足にも使われてるので、そこを重視してます。お客さんの乗りやすさですよね」

これまで重心の低いハーレーに長く乗っていたオーナーの安心感を考え、足つき性に配慮。信号待ちで止まった際に足がしっかり着くよう、オーナーにまたがってもらい時間をかけてフィッティングを煮詰めていったそうだ。そして、シート後方にはツールやETCを収納出来るスペースを用意している点も具合がいい。

さて、他のディテイルに目を送ろう。BMらしさを残したカスタムをテーマに、まず氏は、ノーマルの貧相なトップブリッジを見栄えのするアルミビレット製に変換。前後ホイールもノーマルを使用しつつ色味をガンメタに塗装。全体的に金属系の質感を出したかったための脚色である。

ヘッドライトも捨て置けない箇所だ。純正の大型から中型タイプに変更しているが、実はBMの場合、メインの電装系のほとんどがヘッドライトに格納されている。なので、ライトを変えるとなれば必然的にその辺を分散してやり直す必要があり、結局はメインハーネスまでが全部引き直された。

「あとはやっぱりBMWもハーレーと同じでエンジンがかなり目立つものですから、ヘッドカバーを旧型の物にしたりとか。エアクリーナーボックスも’80年代ですとプラスチック製なんですけど、それも旧タイプの物にしてます」

そして、エンジンの『R100RS』のエンブレムである。この年式だと付いていないため取り寄せた箇所だと言う。「ドイツアメリカンみたいな感じで良いデザインなんですよね（笑）」と、そう楽しげに笑う氏の姿には、根っからのオートバイ好きに共通した生彩がある。

HANDLE

ブレースハンドルはレンサル製。トップブリッジは削り出しの米国製で、ミラーは市販のハーレー用をセット。

FRONT FORK

フォークはノーマルでヘッドライトを中型タイプに変更。それに合わせてライト内のハーネス類が引き直される。

ENGINE

ノーマルのヘッドカバーとエアクリーナーボックスだと味気ないため旧型に換装。エンブレムもポイント。

SEAT

宮城県のジミードープによるワンオフシート。オーナーと共に乗り心地を吟味し、時間をかけて形にした箇所。

MUFFLER

マフラーはサイレンサーに汎用品を使用。そのままのインナーでは音量が大き過ぎるため排圧を合わせて調整。

REAR END

ショックとホイール共にノーマルをそのまま採用。ホイールは全体の色味に合わせパウダーのガンメタを塗装。