H-D FXS 1980
KATSU MOTORWORKS

吸い上げてきた現場感で
オーナー理想の景勝に呼応

ハーレーのみならず、幅広いジャンルのバイクを手がける福岡の『カツモーターワークス』。これまでもモトグッツィをベースにしたカフェレーサーをカスタムショーに出展しアワードを獲得するなど、その絶対領域の広さが本領のビルダーの勝本さんだが、氏が最も得意とするのはオールドスクール・チョッパーだ。

「このバイクは、元々カスタムされていたものを、うちで少しずつリメイクしていったんです」。そう勝本さんは、今回の経緯を思い出しながら訥々（とつとつ）と話し始めてくれた。

オーナーには事前にカスタムに関してある程度のビジョンがあったようで、理想に近いというバイクの写真が同店には持ち込まれていた。そのためそれを参考にしつつ、勝本さんとのディスカッションを重ねてカスタムは徐々に進んでいくことに。

「最初は『車高を下げたい』ということだったのでフロントフォークを74スプリンガーにして、それに合わせてリアサスも下げて……。タンクとフェンダーも換えましたね」

足周りと外装が換装されたマシンは、以前の少々ヤレた雰囲気から少しずつ、しかし確実に氏が得意とするクリーンなチョッパーへと進化していった。

そして、タンクとフェンダーに施されたソリッドなペイントだが、これはオーナーが所有する車のカラーに合わせて調色されたものだそうだ。また塗りを担当したのは勝本さん自身で、修行時代、苦心しながらもほぼ独学でペイントを習得。独立後はショップに塗装ブースを設け、現在ほとんどのカスタムペイントを自らが手がけている。

マフラーやホイールのリム&ハブ、ハンドルなども同じく氏の手でブラックアウトされ、車体各部において重厚感とコントラストを生んでいるところも見逃せないパートである。

「元々フォアコンだったのをミッドにして、ロッカークラッチにして……。ハンドルは作りましたね。ポジションを考えて絞りすぎないような角度にしてます」

ビジュアル面はもちろん、乗りやすさも熟慮しているのは多くのビルダーがそうであるように同店もまた同様。オーナーの体躯を考え、コントローラブルなポジションが与えられている。

「これ、すっごい乗りやすいんですよ。乗ってて楽しいです」。そう言って笑みを浮かべた勝本さんの顔には、このマシンへの自信のほどがのぞく。持ち込まれたオーナーの理想像に、ビルダーが現場で吸い上げてきた豊饒（ほうじょう）な経験値で応えた一台である。

（写真・文／マツモトカズオ）

HANDLE

何より扱いやすさを第一に考え、絞り具合を調整したというワンオフハンドル。トップティーに直に溶接される。

ROCKER CLUTCH

ロッカークラッチは既製品を加工し、踏み込みやすい角度に。初ロッカーのオーナーへの配慮を垣間見る箇所。

OPEN PRIMARY

セル付オープンプライマリーにはワンオフのベルトガード。ベルトのアートワークはSome Pinstripingの仕事。

NUBER PLATE

ナンバーとテールはサイドへ移設。角ばった形状のフェンダーブレスが特徴的。シフトノブはオーナーの持ち込み。

MUFFLER

マフラーはオーナーの理想に忠実に製作された部位。キックアームなどと共にブラックアウトされている。

BATTERY

バッテリーもサイドへ移設。リチウムバッテリーはアンチグラヴィティ。勝本さんが最も信頼するブランドだ。