ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサー

H-D KNUCKLEHEAD
INDIAN ORANGE MOTORCYCLE

September 1st, 2019

ダブルキャブに馳せた
孤独な囚人とのコンタクト

北九州の炭鉱の町で育った男特有の、『腕一本』な感じが良い。店主の小田さんにとってこの一台は、『SPEED ADDICT(スピード中毒者)』と称してシリーズ化した第一号機にあたる。

「ドラッグレースに出るために作った自分用のバイク。その後2017年に車体は別で、エンジンをチューニングしてボンネビル(※世界最速を競うレース)にも出たやつです。でもレースに出ると言っても当然街乗りもするんで、スタイリッシュな感じにしてる」

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサー

ゴリゴリのレーサー然としたフォルムではなく、ストリートユースでも映えるデザイン。そこに同店の伝家の宝刀、徹底した作り込みが合わさることで、他を寄せ付けないビリついた電磁波が帯びている。

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサー

まずは、何はなくともエンジンだ。ダブルキャブにしたかったことで、シリンダーヘッドを加工。デロルトPHM41が並列で付くように、マニホールド部分を一度全部潰して埋め直し、そこから改めて作り直されている。またその際、シリンダーが鋳鉄で溶接が効きにくいことから、ブレージング溶接という溶接箇所をほとんど溶融させない接合法で処理。「ジョーペトラリとかピートヒルとかあの辺の伝説のレーサーに憧れたのもある」、とは本人の弁だ。

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサー

フレームもイチから製作したクライシスで、1インチ径のパイプを使い、ベンダーで曲げてガスで炙り調整していった非常なセクションである。フレームエンドも落ち度無く、往年のヒルクライムレーサーに倣いラウンドテールに完遂。そんな芯のある氏の美学は、こんな言葉に見て取れる。

「なんで1インチにしたかって言うと、昔のアメリカンドラッグレースの規定で1インチの鉄パイプを使えっていうレギュレーションがあったんです。だからそれに合わせてる」

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサー

ガスタンクにしても、そのままポン付けすることはない。段差のある立体的なデザインは、トップとサイドパネルを一旦切り落とし、その落とし込んだ周囲に壁を張っていく感じで鉄板をあてがい成形したものだ。また、テールカウルにしても、そのままではのぺっとした印象になってしまうため、エンドをわずかに跳ね上げアクセントを付けるという、細やかなモテ男的配慮が行き届く。

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサー

しかしこうした陽の目を見る裏方は、とにかく孤独な作業の連続だ。その神々しいまでのストイックな運動は時に、独房に入れられた囚人が自らの肉体を延々鍛え上げる姿にも酷似する。

HARLEY-DAVIDSON KNUCKLEHEAD DETAIL WORK

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサーのフロントフォーク

FRONT FORK

フロントフォークには名品セリアーニのオールドGPを装着。ブレーキはカンリン製ダブルパネルをセット。

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサーのガスタンク

GAS TANK

トップとサイドパネルを一段落として立体的デザインとしたガスタンク。只で終わらせないのが同店の作法。

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサーのキャブレター

CARBURETOR

どうしてもやりたかったことでダブル化。デロルトPHM41のセットアップにあたりシリンダーヘッドを加工。

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサーのテールカウル

TAIL COWL

鉄板を叩き出して、エンドを僅かに跳ね上げる。フレームとの固定箇所などテクニカルな仕上げがならではだ。

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサーのフレーム

FRAME

フレームエンドは当時のヒルクライムレーサーをイメージしてラウンド型に。パイプは1インチ径を使用。

ハーレー ナックルヘッドのドラッグレーサーのリアエンド

REAR END

ロッドを抜いて折り畳み式となる技巧的プレートやチェーンカバーに、作り手の熱量の高さが現れている。

BUILDER’S VOICE

INDIAN ORANGE MOTORCYCLE

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電話 093-701-0557
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SHOP INDIAN ORANGE MOTORCYCLEのショップ紹介
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