陸王RT 1957
A.A.R.
WLの巧者が一肌脱ぐ
理屈なしのリアリティ
公道仕様ではなく、石川県の千里浜海岸で開催される『千里浜サンドフラッツ』用に組み上げられた一台。日本では唯一波打ち際で繰り広げられるヴィンテージモーターレースで、出走するマシンはブロックタイヤを履き、誰よりも砂浜をスピーディーに駆け抜けるセットアップが施されている。
‘57年式陸王RTがベースのレーサーは、地元石川から全国の旧車ラバーへハーレーパーツを供給し続ける『A.A.R.』が手掛けたもので、これは代表宮崎さんの愛車だ。WLモデルとケタ違いの時間を過ごして来た氏のバディとあって、そのシルエットからは只ならない雰囲気がバンバンに出ている。何より、ハーレーではなく陸王を選択するところからして趣味が良い。
聞けば、完全なるバスケット(すべての部品がバラバラの状態)から始まったカスタムだと言う。車両として買った物ではなく、部品をひとつずつ合わせていき製作されたものだ。
「クランクケースとシリンダーも違います。シリンダーは陸王のRT2型ですね。ケースとフレームもマッチングじゃなくて、フレームはRT1型で、ミッションはRT2型の4速です」
ドラムブレーキにはWL用を使うが、陸王のサイズに対して幅広のため、バッキングプレートのカラー調整を行って装着。加工無しでつじつまを合わせた部位である。また、特徴的なフロントフォークにも掻き立てられる。
ヨーロッパ製ヒルクライムフォークを幅詰めした物だが、本来この商品はリアレッグがフロントレッグの外側に設計されたもの。しかしそのデザインを嫌い、リアレッグをフロントレッグの内側に入り込ませ、カット&ウェルドで首尾よくリメイクされた。
フレーム内にピタリと収まるアルミタンクもレーシーなテイストを助長する。加工物が特別得意なわけではないと語る宮崎さんによるワンオフパートは他に、リアフェンダーステーなどにも見られるが、圧倒的な知識に裏付けられたリアルな空気感がこのマシンのアドバンテージだ。
「排気量はS&Sのストローカーが入ってるんで860ccぐらいですかね。キャブは九七式側車付二輪車というのがあって、多分その軍用のやつです。セッティングはリンカートと一緒なんで別に問題はないです」
フラットヘッドエンジンの造詣の深さは国内突出。縦横に張り巡らせたアーカイブを自在に操り構築したサンドレーサーには、往年のまばゆい光景を夢想させる深みがある。
陸王RT 1957 DETAIL WORK
HANDLE
厳密に言えば譲ってもらった物だと語るレーサー然としたハンドルは、ヒルクライマーハンドルのレプリカ。
FRONT FORK
在庫であったヒルクライムフォークのリアレッグを内側へ加工。ライト部にはライドコントロールが付く。
GAS TANK
タンクはアルミで製作。ハーレーのバーアンドシールドロゴの中にRIKUOの文字が入るメーターは当時の純正品。
CARBURETOR
キャブはおそらく陸王軍用の九七式側車付二輪車タイプとのこと。仕様はリンカートとほぼ同じだそう。
SEAT
フラットバーで支持されたソロシートはイタリア製の自転車用を流用。前側のフラップなどアクセントが入る。
REAR FENDER
19インチホイールに合う細身のフェンダーを設置。タイヤとのクリアランスを広く取りワンオフのステーで保持。
BUILDER’S VOICE
A.A.R.
住所 | 石川県金沢市専光寺ワ59-1 |
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電話 | 076-267-8511 |
FAX | 076-267-8522 |
SHOP | A.A.R.のショップ紹介 |
営業時間 | 11:00 ~ 20:00 |
定休日 | 土曜日 |