YAMAHA SR400 1997
ROOSTER MOTOR CYCLE
枕を共にしたい
無性なジョイフル
押さえるべきところを押さえた上で、既存の枠をぴょんと飛び越えた斬新なカスタムだ。基本を修得した上で大技を編み出す空手家のような無理のなさは、見ていて安心感がある。ただ闇雲に奇天烈なスタイルを追い求めるのではない、ファンの心にすんなり届くGスポットの当て方は長年SRと対話してきた賜物だろう。
『カテゴリを気にせず人とは違った物を』、というテーマで製作されたマシンである。2014年のホットロッドカスタムショーに出展したこのSRは、フォークにハーレー用の74スプリンガーを使い、ステムを打ち換えて装着。そして、リアホイールも同じくハーレー用でディスク化とし、目新しい細身のシートはローチャリから引っ張って来た物だそうだ。なんとも柔らかな発想のパーツチョイスである。
「大変だったのはガソリンのサブタンクでしょうか。メインのタンクが小さいのでサブを付けたんですけど、キャブの位置よりどうしても下になってしまう。だからそれを電磁式じゃなくて負圧式のポンプで上げてからキャブに送ってるんです」
バッテリーレスにしているため負圧式のアナログな処理になっていると言う。意外と複雑に手が入っている箇所ながら、ポンプを始めそれらの構造を極力見えなくするのに苦労したそうだ。店主の白幡さんは、「言わないと分からない部分だろうけど、そこはやはり走りに直結するものだから時間はかかりましたね」、とおだやかな口調で当時の作業を振り返る。
ハンドルにも歴史がある。2014年のショーの前年に出展した車両に付けていた物を、分解してリメイクしたそうだ。聞けば、インナースロットル化していたそれを活かしたかったからで、気付けば長い付き合いである。そして、アイキャッチに利くローチャリ用バナナシートの下を、ごっそりとドロップシートレール化。例え今のタイプに飽きても他のシートを合わせやすいようにと、つぶしを利かせたセクションとなっている。
でもって極め付けが、外装に弾けるように描かれたグラフィックだ。普段はアイスホッケーやサーフボード、オフロードバイクなどを扱う交流の深いペインターに何の指定もなく、「好きなように描いてくれ」、と依頼したものである。アメコミが炸裂したそれは、もう眺めているだけでも楽しい気分にさせてくれる各キャラクターやレタリングがギッシリと詰まり、息つく間もない。
勘所を押さえつつ飛躍したフォルムに、完全お任せで上がって来た溢れんばかりのジョイフル。願わくば、枕元に置いて同じ夢を見てみたい。
YAMAHA SR400 1997 DETAIL WORK
HANDLE
インナースロットル化されたワンオフハンドル。フロントブレーキレスのためレバー類の無いシンプルな外面。
FRONT FORK
フォークはハーレー用の74スプリンガーのステム部分を打ち換えて使用。ホイールはスプールハブタイプ。
GAS TANK
小さめに設計したガスタンク。知り合いのペインターにすべてお任せで依頼したアメコミ炸裂のグラフィック。
SEAT
細身のシートは簡単に脱着可能なローチャリ用をセット。ドロップシートレール加工で他のシートにも対応。
FENDER STAY
グラフィックが凝縮したリブフェンダーをシンプルなオーバルステーで支持。賑やかなリア周りに映える造形だ。
MUFFLER
マフラーはスチールでワンオフ。オーバルのメガフォン型の選択がこのマシンのオリジナリティに良く合う。
BUILDER’S VOICE
ROOSTER MOTOR CYCLE
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