YAMAHA SR400 1997
GIAN FACTORY
手数の多さに惹きつけられる
無二のストリートトラッカー
ヤマハSRを筆頭に多様な車種のカスタムを手がける熊本の『ジャイアンファクトリー』。カスタムスタイルはチョッパーからカフェレーサーまで幅広くカバーする。そんな同店の、クリエイティビティの高さを象徴する一台を紹介したい。
ベースは’97年式のSR(1JR)。純正はドラムブレーキを装備するが、改造申請でディスク公認を取っている。そしてこの一台を語る上で最も特筆すべき点はリアセクション。その詳細を店主である萩原さんが話してくれた。
「リアをモノショック化してます。以前モトクロスをやってたんですけど、ツインショックは着地した時やコーナーの立ち上がりでヨレるんです。モノショックはその挙動がほとんど出ないんですよね。
使ったのはカワサキバルカンのスイングアームです。一旦真っ二つに切って、魚の三枚おろしみたいに(笑)。それを結合してピポッドシャフトをSRのものに溶接してチェーンとタイヤのラインを出してます」
『3枚おろし』という、およそカスタムでは聞かれないキラーワード。そのワードセンスに萩原さんのウィットに富んだ人柄を垣間見る。
モノサス化のみならず、走りにフォーカスしたカスタムパートも少なくない。例えばフォーク。スプリングをハイパープロに換え、フォークオイルの粘度を固めにセッティング。これによりブレーキング時の沈み込みを抑え、フロントに粘りを出した。
エンジンにも手が入っている。純正より約2kgほど軽量な井上ボーリング製の斧型クランクを用いることで不要な振動を軽減。ピストンをワイセコ、カムをヨシムラに換装したモーターは萩原さん曰く、「荒々しい感じだけど乗ってみるとマイルドな回りかたをして面白いんです」とのこと。
シリンダーは一枚一枚アルミを削り出して溶接しビッグフィン化。小ぶりに見えがちなSRのエンジンに見た目の迫力を増している点も興味深い。手数は多いが、嫌味なく、均整の取れたストリートトラッカーである。
「販売用に作ったバイクですけど、少しずつマイナーチェンジしてるうちに愛着が湧いちゃって。今は自分用になってますね。このSRでやりたいこと、試したいことを色々実験もしてて、いいところはお客さんのバイクに反映させることもあります。
技術的に色々勉強させてくれた一台です。欲しいっていう人がいれば売ってもいいけど……よっぽどの物好きしか買わないでしょうね」
そう言って笑った萩原さん。このマシンとの蜜月は、もうしばらく続きそうだ。
(写真・文/マツモトカズオ)
YAMAHA SR400 1997 DETAIL WORK
HANDLE
ハンドルはブラットスタイルのローボバーバー。グリップは大神戸共栄圏。メーターはスミスタイプのレプリカ。
DISK ROTOR
偶然SR用ハブとピッチが同じだったことから採用したドゥカティ996純正ローター。キャリパーはブレンボ。
ENGINE
荒木エフマシン製の乾式クラッチが強烈に主張するエンジン周り。フルエキはSRショップ『グリーンティー』製。
SEAT COWL
FRPの外装類はM&M’sモーターサイクル製。萩原さんがストックしていたもので現在は販売していない一品。
MUFFLER
サイレンサーはテックサーフ製。リアは17インチ化され(フロントは19)ウェットにも強いタイヤを履く。
SWINGARM
このカスタムの肝となる、『3枚おろし』したというバルカン純正のスイングアーム。リアサスはスティード用。
BUILDER’S VOICE
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