H-D DL 1930
A.A.R.
懐古趣味に走らない
現役世代が臨む景勝地
紐解けば、現行のスポーツスターモデルの先祖にあたるのが今回の1930年式DLだ。一見したところでは似ても似つかない両車だが、そのメカニズムに色濃いDNAが流れている。
それは4カム。カムシャフトが前後シリンダー共に独立した初の4カム機構は、当時のフラットヘッド系Vツインユニットを飛躍的に高性能化させた部位で、それが今のスポーツスターへと正常進化を遂げ、脈々と受け継がれている。
今回の主人公は、その今から90年も前の年代物である。が、90年という時間を経ながらも今も尚、快活にアイドリングを刻み、アスファルトを駆け抜ける光景が痛快でならない。人で例えるのもナンセンスだが、まるで老人が小気味よく疾走するその姿は衝撃ですらある。
「走る方を優先したというか、飾っておくよりも走って楽しめるようにと。あとはまあ修理ですよね。車体周りと、あと面倒なのは電気系。ジェネレーターやアンメーターも動くようにして。まあそんなところです」
ハーレーのフラットヘッドエンジン専科として名高い、金沢の『A.A.R.(エーエーアール)』が手をくだした一台。ストックスタイルを基調として、緑豊かな’30年代の景色が浮かび上がってくるかの牧歌的な走りが再現されている。
「DLの魅力ですか? スポーツスターの先祖ですからまずその辺ですよね。あと乗り味的にはWLのようなものですけど、ちょっと力のないWLといった感じ。まあ個人的には好きですよ」
ほとんどの箇所を改修していったと話す店主の宮崎さんは、純正パーツを大本にして、社外品を織り交ぜ形をととのえていった。まずジェネレーターやアンメーターなどの電気系を皮切りに、マフラーやインディアン用を流用したテールランプといった外装から、キャブへと進行。キャブに関してはアンチモンというアルミ系の不慣れな素材が使われていたため特に修繕には労力がいったと言う。
「オーナーさんはよく走る人です。アフターパーツについてもWLの先祖になるんで共通部品がまだあります。だから消耗品については意外となんとかなりますね」
また一方で、ガスタンクには自動循環しないオイル用のハンドポンプが付いたり、マフラーには消音効果も兼ねたデザインのパイプが付くなど、今見ればトリッキーなディテイルにも目が奪われる。そしてこうした100年近く前の物作りが飾りではなく、この時代に実際に体感できるという点がハーレーのただならない奥ゆきでもある。
HARLEY-DAVIDSON DL 1930 DETAIL WORK
HANDLE
純正ワイドハンドルの中央には、アンペアメーターが埋め込まれたイグニッションスイッチボックスが配備。
FRONT FORK
フォークは純正のアイビームで、ヘッドライトはこの年代の特徴的なダブル仕様。ホーン下は純正ツールボックス。
GAS TANK
右にガソリン、左はガソリンとオイルタンクとなる。循環しないオイルを抜いて継ぎ足す際のハンドポンプが付く。
CARBURETOR
排気量750ccのベビーツインエンジンにはシェブラーキャブが付く。アンチモン材のため修繕に苦労したと話す。
MUFFLER
ビッグツイン用とおぼしきマフラーをセット。同じデザインとされた上部のパイプは消音交換を計ったもの。
REAR FENDER
歴史を物語るリアフェンダーは純正で、テールランプとステーにはインディアンのワンオーワン用を装着する。
BUILDER’S VOICE
A.A.R.
住所 | 石川県金沢市専光寺ワ59-1 |
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電話 | 076-267-8511 |
FAX | 076-267-8522 |
SHOP | A.A.R.のショップ紹介 |
営業時間 | 11:00 ~ 20:00 |
定休日 | 土曜日 |