YAMAHA XV250 Virago 1996
A BEARD
ボールペンが踊る
デイドリームへの招待状
こうなってくると、がぜん吸い寄せられてしまう。ヤマハビラーゴ250を使っておきながらこのたたずまいである。ふと、なだらかな海面がぐんとせり上がってくる、そんな感情の高ぶりが周りを包み込んで、一気に歓喜の底へと沈めてしまう。その手のガツンがある。
広く知られた国産のビラーゴを王道のチョッパースタイルに料理するのではなく、オリジナリティあふれたカスタムに変幻させたのは、広島県廿日市の『ビアード』。毎回自由な感性で創作する、前へ倣えを嫌ったカスタムショップだ。
事の発端は、ある朝のミーティング。ちょっとつまらない話が持ち上がった時に、なんの気なしに作り手の上田さんが落書きをしていたバイクがこれだそうだ。「こうラインを引いててタイヤを引っ付けたら、『おっ良いじゃん』って。そんなバイクです(笑)」。
例えば、行きつけの居酒屋でもメモとボールペンを借りて落書きするという氏のフラッシュアイデアは四六時中稼働している。でも決して真剣には描かれないその線だけの羅列は、後日ゆっくりと輪郭を浮き上がらせ、他の作り手とは違った未開のゾーンで殻を脱ぐ。
今回の肝(きも)は、フロントフォークとガスタンクである。まずフォークは、4m長の大きな四角い鋼管を購入してそれを専門のベンダー屋でゆるく曲げてもらい、それをベースに製作。片方ずつ作ったその下側にはホンダフュージョンのサスとブレーキを流用して加工する。この思わぬ所からのチョイスは、こうした車種も日常的に取り扱う氏がふだんの光景から得た発想である。
次にガスタンクの造形もまた型にはまらず奔放だ。シート下まで伸ばされた特異な形状は鉄板一枚から創り上げたもので、前後にガソリンと電装部屋とに分けられている。また、これだけ広い面積を溶接する際にはどうしても生じてしまう歪(ひず)みへの留意が大変だったと、上田さんはいつものごとく楽しげだ。
さて、リアフェンダーはどうだろう。こちらもありきたりで済まされるはずもなく、コの字型に成形した鉄板を上から付け足して立体感を装飾。更にはハンドルも一連の流れから四角く作り、そのまま勢い余ってグリップまでも四角で統一。これら打率で言えばさながら4割以上の痛打がまんべんなくキャンバスを交錯している。
題して、WEEVIL(ウィービル)。ゾウムシと名付けられたひっそりとした艶消しなイメージとは対照的に、その創作物には照り返すような趣きがある。
YAMAHA XV250 Virago 1996 DETAIL WORK
HANDLE
全体のデザインに合わせてハンドルを四角く成形。更にはグリップも同じ形状に製作しブロンズメッキを施行。
FRONT FORK
4m大の四角い鋼管からワンオフ。下側にはホンダフュージョンのサスとブレーキを流用加工して収めている。
GAS TANK
シート下まで延長されたガスタンクは前後にガソリンと電装ボックスとに分割。鉄板一枚から成形した部位。
REAR FENDER
汎用フラットフェンダーの上にあらかじめ用意したコの字型の鉄板を溶接。立体感を出して完成度を高める。
SWING ARM
スイングアームを一品製作。その上のサイドカバーに格納したブロンズプレート内にスタータースイッチを配備。
MUFFLER
サイレンサーにスーパートラップを使いエキパイをワンオフ。2イン1をデザイン的にひとつに見せる。
BUILDER’S VOICE
A BEARD
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SHOP | A BEARDのショップ紹介 |
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