BUELL XB12S 2009
WEST VILLAGE CUSTOM CYCLES

一発で沈める
米国カフェスタイル

熱心なファンに惜しまれつつも2009年に幕を下ろした『ビューエル』。オリジナルフレームにハーレーダビッドソン製エンジンを積んだロードスポーツバイクとして鳴らした同メーカーは、世間の風潮に迎合しないキレたデザインと革新的なメカニズムで独自の路線を突っ走っていた。そしてその孤高のアティチュードは一部の通人たちの心を捉え続け、生産中止からしばらく経つ今でもこうして市場にインパクトを与えている。

「お客さんがリア周りを普通じゃない形にして欲しいと。基本的に僕レーシングバイクも好きなので、そういった所とビューエルの相性を考えて作ってる。丸っこいのだとマッスルさが無くなるから、エッジを立てて攻撃的な印象を出してます」

店主の西村さんは、シートカウルの製作にはかなり手が掛かっていると話すが、意外とその下にあしらったスパイダーネットがカスタムのポイントかもしれないと表情を崩す。カフェスタイルが前提ではあるが、そのままでは氏が専心するアメリカンの要素が足りない。そこでひらめいたのがこのスパイダーネットだった。

「意外とアメリカンカスタムっぽさが出るなって。丸棒をひとつずつ曲げて、アール付けて、間隔計って、削って曲げて溶接してっていう。結構エネルギー使ってる気がします（笑）」

しかも平面ではなく若干の3Dだったため、その辺がやっかいだったそうだ。また、既存のシートレイルは全て取っ払い、ひと回り細いパイプをつなぎ合わせて土台を再構築。そこにカウルを合わせて裏面まで鉄板でととのえている。

一方、ECUや電装系の収納も容易じゃない。元々はシート下にたっぷり詰め込まれているのだが、今回はそこをモディファイしているためどこかへ移す必要がある。そこで配線をまず引き直すことからトライし、ECUはフロントカウルの中へ収め、電装系のヒューズボックスはリアシートカウルのわずかな空間へと格納。目配りのきいた仕事ぶりが、労力を何ら窺わせないスマートさで仕舞われている。

「ヘッドライトは海外でしかデリバリーされていないXB1125R用。最初はフロントまでやる予定はなかったんですけどオーナーさんの希望が強かったんで。それにそこそこで止めたんじゃ面白くないでしょ（笑）」

右へ倣えへの反骨。ビューエルの孤高のアティチュードは、飼い慣らされることなく、こうして同じ物作りのフィールドに立つ人間の手でよりアグレッシブに変換された。

FRONT COWL

ヘッドライトは海外販売のみのXB1125R用。それに合わせてカウルをFRPで作り、マットブラックに塗装。

HANDLE

カスタム屋の『色』を押し出すハンドル周り。ワンオフハンドルに、マスターはニッシンラジアルタイプを選択。

FRONT WHEEL

足周りは純正を使用。フォークやアルミホイール、大径シングルローターなどハイパフォーマンスな作りが並ぶ。

MUFFLER

マフラーは一品製作。バイク全体の危うい雰囲気に合わせてエンド部はエッジを持たせたデザインとされた。

SPIDER NET

ポイントに挙げるスパイダーネット。カフェスタイルだけで終わらせず、アメリカンの要素を打ち出した部位。

SEAT COWL

シートカウルは鉄板を叩き出していき創作。内部には空間を利用して電装系のヒューズボックスが収められる。