
H-D XL1200S 1997
CYCLE WEST
シンプルに隠された技巧
16×16のストリートスター
「よくできた二輪車」。スポーツスターを形容する最上の言葉であると確信している。軽快で走れば速く、もっともオートバイらしい素性。さらにどんな方向性へのカスタムへも、柔軟に対応できる素地。
それゆえに個体数も多く、せっかくカスタムを施しても似た車両があり、個性を失いがちになるのも否めない。
埼玉県比企郡の『CYCLE WEST』は、旧車からツインカムまで幅広い守備範囲を持ち、数多くのカスタムを手がけている。そのファクトリーにあった’97年式 XL1200Sのカスタム車両。
ベースはエボスポーツと呼ばれ、走れば速く、イジってよしの誰もが納得する名車だ。四半世紀以上前に誕生した車両ではあるが、未だ現役バリバリで生存個体数も多く、前述した通りカスタムで個性を表現するのが難しい1台でもある。
しかし主人の西山さんが手がけた1200Sは、シンプルでありながら、誰とも似ていない。見たことがあるようで、どこかが違うのだ。
「違和感」と言えばしっくりくるのだろうか、その原因を突き止めるべくじっくりと目を凝らす。一見サンドブラスト処理されていると思っていた箇所がそれを真似た塗装面であったり、当然同一とすべき左右対になっているパーツの配色が異なっていたり。
これを遊びと捉えるのか、独特のセンスと解釈すべきなのか、すべては奥深い技巧のもとに包み隠され、「心地いい違和感」を覚える。
2010年に登場したXL1200Xフォーティエイトを彷彿させるモダンなスタイル。オーナーからの要望は、そのシルエットがベースにありつつも、古いキャブ車にも興味があった。キャブ車のエボスポーツであっても、カスタムすればイメージに近づけられる。ゆえに、とにかく好みのカスタム車両を数多く提出してもらった。
「前後16インチというのが最初だったか、それともFLフォークで組むというのが先だったか。今となっては覚えていませんが、このカスタムの落とし所が見えてきました」
ソフテイルのフロントフォーク、リアはリジット化。前後タイヤは16インチで、フロントはFLのワイドリム、リアはスポーツ純正リムを使用。ガスタンクは汎用のスポタンをワンオフ。西山さんが持つあらゆる技巧を詰め込み、そしてひた隠し、1台のストリートスターが完成した。
「違和感」には「心地いい違和感」と「不快を覚えさせる違和感」があるが、決して不快なところはどこにも見当たらない。イジった形跡もなく変わっているそこが、この1200Sの「違和感」だったのかもしれない。
(文/野上真一)
HARLEY-DAVIDSON XL1200S 1997 DETAIL WORK
HANDLE
サンドブラストとそれに見せかけた塗装が混在するのがこのカスタムの見どころ。ハンドルはSAM’S製。
FRONT FORK
フロントフォークはソフテイルFLSTC純正にNice! Motorcycleのローダウンキットを組み込んで使用。
GAS TANK
造形の美しいワンオフのスポーツタンク。まずは下をカットして低く、さらにエンド部分を詰めて細くしている。
PRIMARY COVER
左足の定位置となるプライマリーカバーは白く塗装。左フロントフォークのカバーも同様の白に塗装された。
SEAT
アトリエチェリーによるワンオフシート。ひと針ひと針均等に、そして同じテンションで精密に縫われている。
REAR WHEEL
サンドブラストを施したように見えるリアのリムは塗装仕上げ。ムーンアイズのホイールカバーを装着した。
BUILDER’S VOICE
CYCLE WEST
住所 | 埼玉県比企郡吉見町大串532-8 |
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