KAWASAKI W650 1998
GREASE MOTORCYCLE
誰ひとり置いてかない
無数にある解決への糸口
シニカルかつ巧緻に作り込んだディテイルをカスタムに添えるショップの、カフェレーサー。今回はこれまでの系統でいえば比較的目立ったからくりのない一台だが、そこに脈うつ鼓動は紛れもなく『グリースモーターサイクル』のそれだ。
「20代のオーナーがカフェレーサーに乗りたいっていう注文だったんです。で、これは’70年代のイギリスをテーマにして、当時こういうモデルがあったんじゃないかっていう雰囲気で作ってます」
そこですかさず大変だった箇所を店主の鈴木さんに尋ねると、ほぼ全てのパートをワンオフしたことから『全体のバランス』という返答を得た。パーツ単体のサイズ感だったり位置を微調整していき、オーナーの体格にフィットするシルエットに製作されている。
例えば、フロントカウル。フォークとの横幅を合わせてイメージした形状へ、炙っては曲げて削ってを繰り返して成形していき、最終的にはあっても無くてもどちらでもいける自然な装いにまで浄化させている。またこのとき、凡人なら心が折れるようなわずらわしい作業も出現するが、氏はいたって涼しい顔だ。
「何回も合わせてバランス見ながら加工するんですけどこの辺は全然余裕です。プラモデル作ってるんで。もう鉄に比べたらかんたんかんたん(笑)」
プロモデラー顔負けのガンプラの仕上がりを知っている手前、その言葉に妙に納得させられる。一方、鉄で製作したガスタンクやシートカウルがFRPパーツに比べて浮き立たないかといえば決してそんなことはない。
曰く、無我夢中で鉄板を力いっぱい叩くだけ、手首がピキピキするまでやり続けると話すそれらは、何枚もの鉄板をつなぎ要所にエッジを取り入れたスピードフォルムへと遂行された。
「このシートカウルは勝手に皆がエビテールって呼び始めたんですよ(笑)。このオーナーの子も絶対にこのテールだけは付けたいですって。あとはレトロな’70年代のモチーフを狙いつつ、ハンドルとかマスターに今どきのやつを付けてアレンジしてます」
そして20代のオーナーということで、限られた予算の中でいかにまとめていくかも課題だった。そこでオーナー自らエンジンなどの磨き作業に加わったのだが、ある時はウトウトと目をつぶりながら磨いていたなんていう強烈な逸話まで残しているようだ。
お金が足りないからそこまでではなく、足りないなりにどうしていくか。そこには、10代の学生からの客に慕われる店主のハートウォームがある。
KAWASAKI W650 1998 DETAIL WORK
HANDLE
レトロな’70年代をモチーフとしつつグリップやレバー、マスター、ハイスロットル化など要所を現代風にアレンジ。
FRONT FORK
純正フォークを1インチダウン。既成カウルを何度も調整していき装着。スタビを兼ねたフェンダーステーを配備。
GAS TANK
無我夢中で力いっぱい鉄板を叩くだけと話すタンク。叩き出しで成形した数枚の鉄板をつなぎ合わせて製作。
ELECTRICAL BOX
シートレイルを作り直し、その下にビタリとバッテリーも収まる電装ボックス。縁に飾りのオーナメントを添える。
FOOT CONTROL
オーナーの体格に合わせベストな位置で調整されたフットコントロール。可変式で調整が利く作りとされた。
SEAT COWL
周囲から『エビテール』の名で呼ばれる後方のウイングしたリアカウル。手縫いシートも主人の鈴木さんが担当。
BUILDER’S VOICE
GREASE MOTORCYCLE
住所 | 愛知県日進市北新町大洞435-1 |
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電話 | 0561-76-2250 |
SHOP | GREASE MOTORCYCLEのショップ紹介 |
営業時間 | 13:00 ~ 20:00 |
定休日 | 月曜日、火曜日 |