HONDA CB750 CUSTOM 1981
MINAMI MOTORCYCLE

連綿とながれる
麗姿のハーフライフ

国内広しといえども、カフェレーサースタイルのカスタムのみを手がけているショップは稀だ。チョッパーやトラッカー系の専門店は数あるが、それらに比べ、パイの狭いカフェスタイルの分野で勝負するという気概に触れるだけでも背筋が伸びる。

モダンかつスタイリッシュなフォルムから度の超えた熱狂者が多いこのジャンルにおいて、武名をとどろかすのが東京の『ミナミモーターサイクル』だ。

始動から一貫してカフェスタイルを世に送り出してきた店主の平安山（へいあんざん）さんには、迷いもなければブレもない。そもそもブレるだけの選択肢を一切排除している分、眼前には光に満ちた真っ直ぐなラインが延々と続いている。

今回のメニューは、ホンダCB750カスタムがベースだ。当時わずかにレイクされたフロントフォークや低めのシート高、プルバックハンドルなどでアメリカンタイプのバイクとして登場したモデルだが、その素性を活かしつつも、正反対といえるシルエットに先進させている点が一興（いっきょう）だ。

早速、製作話をたずねると、「いつも通りです」と至ってシンプルな解答を得た。特別なことは何もなく、カフェレーサーを専門に扱うショップとしてやるべきことをやっただけのこと。そしてそこには、高価なパーツや目を引くペイントの類もない。すべては予知された周到なバランス感覚のもとで構築されている。

ホイールやフロントフォークに純正品を、ガスタンクに他車種純正を流用し、前後フェンダーやヘッドライトなどに汎用品を用いるが、アルミ製のトップブリッジとハンドルに付くミニスイッチはオリジナルパーツだ。特にボックス型のミニスイッチは今後市販予定で、車体と調和しつつ存在感を打ち出すプッシュ／トグルのシンプルな設計は、同店の持説を投影したものだろう。

「ウチは別に高級パーツとかは何も付けない。パーツ単体や外装の派手なペイントで押していくのが好きじゃないんですよ。まあこういう色合いのカラーリングが自分が好きなんで。だから本当に何もないです、普通どおり（笑）」

実際のところ、平安山さんから話を聞きだすのには困難を要する。すべてをまくしたて、隅々まで説明するようなことはしない。すべてを語ることなど出来ないし、それを肯定してはいないからだ。それは氏だけではなく、一部の日本人が連綿と持ち続けてきた美意識でもある。ゆえに、そこが人一倍強い氏が抱きすくめる『美』には、より湿気が帯びる。

HANDLE

カフェスタイルに必須のセパハンはブラックアウトされ、アルミ製トップブリッジはオリジナルパーツとなる。

MINI SWITCH

質感の高いアルミボディのボックス型ミニスイッチ。オリジナル商品として市販予定。ブラックアルマイト仕上げ。

FRONT FORK

フォークは純正品を使いローダウン。アウターチューブやヘッドライト、フェンダーをブラックカラーで統一。

GAS TANK

他車種のストックタンクを流用。カラーリングはシックなネイビーで塗り、同店固有の一歩引いた目線の美意識を演出。

MUFFLER

CB750F純正マフラーを用いサイレンサーにメガホンタイプを装着。操作系はウッドストック製バックステップ。

SEAT RAIL

フレームはガスタンク後端からカットしてループフレーム化。ショートフェンダーをセットし軽快な印象に。