H-D KNUCKLEHEAD 2023
MOTORI GARAGE

鳴りやむことない
カチ盛りの狂騒曲

今回もスタンダードなシルエットにまとめたチョッパーである。パンヘッドのレプリカフレームにS&S製ナックルヘッドモーターを積み、外装にはダイナ／スポーツスター系の後期型39φフォークにスポーツタンク、ハイパイプマフラーと、特別目新しいディテイルパートがあるわけではない。でも、これまたいつものように、見る人を飽かすことない磁力が漏れ出ている。

単にチョッパーと言ったらそこまでだが、その枠だけに収まらない何かがあるのもまた事実。結果的にそれが『モトリガレージ』の持ち味として認知されているわけだけど、ひとえにそれは、『行儀の良さ』と『アウトサイダー的側面』の相反した要素の融合にあるように思う。

会えば分かるが、店主の鳥居さんにしてもメカニックの志賀さんにしてもアウトサイダーのイメージとは縁遠い朗らかな人柄である。でも逆にそうした等身大の人間が作るものだからこそファンは共鳴し、賛同しているのかもしれない。とはいえ、手掛けるチョッパー自体の目鼻立ちが整っていることは紛れもないけれども。

「速そうなチョッパーを作っておこうと思ってて、それにお客さんがついてくれた感じです。オーダーはざっくり言うと真っ黒いバイク（笑）。そんなに細かく指示されたものではなくて、オーナーの好みを想像しながらこんな感じかなと作ったものですね」

指示が少ない注文はショップによってはハードルが高い場合もあるが、同店ではそれが大きな問題にはならない。言ってしまえば、鳥居さんはいつも相手の心の動きに耳を澄ませている。地図を指先で辿りながら、そこに鮮やかな生きた風景を読み取ることのできる人のように、用心深く、時には大胆に駒を進めてゆく。

オーナーの要望通りのブラックで締めたチョッパーだが、『速そうな』というキーワードをうまくはめ込んでいる点も見過ごせない。純正ではないクリーニッシュなS&S製ナックルモーターということもあるが、前後のアルミ鍛造ホイールとストック長フォークの選択がスピーディな雰囲気を演出。そこに来て賊（ぞく）っ気のある2本出しハイパイプマフラーでピリッとした緊張感を備えるのも怠っていない。

「なんか乗るのが楽しそうなバイクですね。軽くて取り回しもよくて、乗るのがめんどくさくならないというかさらっと流せる感じです」。肩の力が抜けたコメントはいつもの通り。このフラットな視点で見続ける景色はさえぎるものなく、どこまでもうららかだ。

FRONT FORK

フォークはダイナ／スポーツスター系の後期型39φを使用。敢えてストック長でスピーディな印象を狙った。

FRONT WHEEL

ブラックホイールは前後ともに軽量アルミ鍛造のグライドをチョイス。新品S&S製モーターとの相性は高い。

GAS TANK

当初は分割タンクの案もあったがオーナーの希望でスポーツタンクをセット。飾らずシンプルにまとめられた。

ENGINE

エンジンにはS&S製ナックルヘッドモーターを搭載。排気量は93cu.in.（約1530cc）でキャブは付属のEキャブ。

SEAT

ぷりっと程よい肉厚を持つコブラシートは宮城県ジミードープの仕事。車体とのフィッティングは申し分ない。

TAIL LIGHT

汎用ルーカステールライトはフェンダーに違和感なく付くよう成形。フェンダーステーはワンオフとなる。