H-D FLH 1982
MOTORI GARAGE

なるようになる
ふたりの水の呼吸

手際が良くて、感度が高い。街中にもツーリングにも映えるカスタムを作らせたらかなりの腕前を披露するのが仙台の『モトリガレージ』だ。が、先に断っておけば専用スキルがずば抜けて高いだとか、飛び級のセンスを誇るとか、そういうわけではない。分かりやすく言えば、そこそこの球速なんだけどコントロールが抜群に良いピッチャーといったところだろうか。

高校野球にしてもプロ野球にしても、バスッバスッとストライクを重ねるピッチャーの舞いは見ていて飽きることが無い。爽快ですらある。なので、それと同じことがバイク屋で起きているとすれば、やはりそこにはおのずと人が集まり熱気を帯びる。

店主の鳥居さんとメカニックの志賀さんが肩ひじ張ることなく作るカスタムは、ふたりの性格を見るかのように口当たりがいい。このショベルヘッドも御多分に洩れず、当初は若干不安を抱いた時もあったようだが、蓋を開けてみればこの通りの佇まいだ。

「これ最初からコンセプトが決まってたわけじゃなくてボヤっとしてたんです。お客さんが好きなパーツを持ち込んで来てそれを付けたり。だからアンバランスにならないかなって心配しながら作ったやつですね（笑）」

車両持ち込みの4速フレームをリジッドフレームに載せ替えるという依頼が始まりだそうだ。そしてポイントを尋ねれば、毎度のごとく地味なことしかしていないらしく、それは例えばわずかに曲がっていたステムの修整や、持ち込みパーツのレストアを兼ねた組み込み辺りである。

「あとはミッションが元々ロータリートップだったんですけどラチェットトップにしたいってことで一台分オーバーホールして組み立ててます。もちろん当たり前の手間はかかりますけど、今なにせ値段が高いですから結構ハードル高いと思いますよ」

載せ替えたい人は多いが、金額的な面から二の足を踏んでしまうカスタムメニューである。そこで鳥居さんはお金をかける所とかけない所を事前に話し合い、極力オーナーの財布に合ったプランで手を尽くす。

一方、外装に至っては33.4φのフロントフォークを皮切りに、レプリカのWRガスタンク、アイアン用リアフェンダー、ショットガンマフラーと、そつがない。また、その迷いのないパーツ選択が織りなす全体のシルエットは控えめだけど、ひと目を引く。プライベートでもあちこちを走り回るふたりのオートバイ好きが手を動かせば、自然とこうなってしまう。

HANDLE

手前にプルバックしたハンドルはショベルのFX純正品。ルックスと操作性からよく用いるディテイルパーツだ。

FRONT FORK

フォークは33.4φの初期アイアンスポーツ用をセット。スプリングにはチェリーズカンパニー製を取り入れる。

GAS TANK

ガスタンクはキャノンボール製WRレプリカを選択。パンヘッド用のため底板をフレーム形状に合わせて成形。

FOOT CONTROL

シフト周りは既存のLEEスタイルを再加工。そのままではオルタネーターケースに付かなかった部位を調整。

MUFFLER

マフラーは以前に同店で作っていたワンオフ品を使用。スロッテッドのマウントステーはスタンディMC製。

REAR END

フェンダーはレプリカのアイアンスポーツ用で、セパレートシートにリバーシートのベイツレプリカを合わす。