H-D FL 1950
CHEAP THRILL
時代背景に合わせた
境目をつく出生の呼び水
旧車と向き合ってきた時間が圧倒的に違う。そして、この仕事をなりわいにしている人固有の入れ込みぶりも欠けるところがない。ぐっと踏み込むほどに見識を深め、更なる高みに向かって黙々と目の前のヴィンテージバイクと向き合っている。表向きのフランクな人柄に秘めた、好きだからこその熱狂が店主林さんの体内では猛(たけ)っている。
「元々はフルオリジナルの車両をレストレーションしたバイクです。それをチョッパーという言葉がまだ生まれるか生まれないかという時代背景で仕上げた車両なんです。だからコテコテというよりはボバーとチョッパーの境目みたいな感じかな」
製作にあたって配慮した箇所はタンクシフトを残したオリジナルタンクで、そこを基点にしてポジションを更に軽快にしていったと言う。また、基本的に大幅にいじるわけではなく、扱いやすいモーターサイクルを指針として形が整えられていった。
チープスリルの柱とする作法にパーツの選択があり、時代考証の合わない部品の装着は一切やっていない。曰く、「その時代にそれはないよね」という明確なNGがあり、そこに注視したカスタムを施行。そのため、例えたった一つの部品を見付けるのに時間がかかったとしてもそれをいとうことはない。
全体のディテイルを見ていこう。純正のワイドグライドフォークにライザー、ガスタンクやフットボード周りは1950年のオリジナル品で統一。その中で敢えてバタ臭さを狙い当時のバイク乗りが流用していたようなヘッドライトを用いるなど、溢れるほどに貯め込んだ造詣の中から特効な一手が繰り出されたりもする。
他に、ヴィンテージパーツとしてもレア物となるレベルゲージ付帯のオイルタンクの設置や、インナースロットルを廃したハンドル周り。乗りやすさを考慮して作り直したスーサイドシフターといったパートも豊潤な経験あってのものだ。
「やっぱりこういう形にしたらオリジナルのスタイルよりもキビキビ走らないと意味がないじゃないですか。だから操作系は結構細かくやってます。ウチなりに良いものに作り変えてるんで、本当に乗りやすいパンヘッドです」
ひと渡りの外装を見てきたが、やはりチープスリルの本丸は内燃機だろう。ただでさえひと言ひと言に大粒の説得力を持つ氏が、「本当に調子良いですわ」と自負するこのパンヘッド。例え同じセリフでも、経験値の確かな方面から発せられる言葉はもうそれだけで揺るぎない。
HARLEY-DAVIDSON FL 1950 DETAIL WORK
FRONT FORK
フォークは1950年純正のワイドグライドフォーク。ヘッドライトは敢えてバタ臭さを狙った物を装着する。
GAS TANK
カスタムの起点となったガスタンクは純正を使用。タンクシフトもオリジナルコンディションを維持したもの。
ENGINE
エンジンのエアカバーは当時のサイクルエンジニアリング製で、オイルタンクは希少なヴィンテージパーツ。
SEAT
使い込まれた装いのシートはベイツ製で、フェンダーはフロント用を加工しタンクと風合いを合わせてセット。
SHIFTER
フットボードやプライマリーカバーは’50年オリジナル品。スーサイドシフターは操作性を加味してワンオフ。
SISSY BAR
ショップに在庫するヴィンテージパーツだと長さ的にバランスが取れないことから単一でリアルに造作した。
BUILDER’S VOICE
CHEAP THRILL
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