H-D U 1939
WRENCH MOTORCYCLE
地面近くでひたぶる
礼節の旧車ロマネスク
作り手の指紋が余すところなく付いた一台だ。それはガスタンクやフロントフォークなどの大物から微小なボルト1本に至るまで、水も漏らさない。カスタムビルドとハンドメイドは密接なつながりを持つが、ボルト1本まで加工を怠らない鉄壁のカスタムはやはり番外の底光りがある。
「オーナーさんのガタイが良いんで、普段ウチで作ってるような小さいチョッパーだと合わないんですよ。だからまあオーナーさんに似合うような感じで。あとは古い車両だからその辺も活かした感じで作りたかったんです」
例えば、ハンドシフトなどはジョッキーシフト化してしまった方が作業的にはイージーだが、この年代のスペックに合わすのならタンクシフトでないとつじつまが合わない。また音にしても、バリバリといかにもなチョッパーサウンドではなく、どこかやさしい、丸みを持った当時の純正サウンドに近付けたものとしている。
店主の柳澤(やなぎさわ)さんは、乗りやすさを無視して見栄え良くするのは簡単だと言う。でも乗りやすさと見栄えのバランスを取るのが一番難しいからこそ、いつもそこにとっぷりと神経を注いでいる。また乗り難さの口実として、「ハーレーだから」「カスタム車両だから」的なことでうやむやにされる風潮があることにもアンチを唱えている。
「なんか乗り難くて当たり前というのはちょっと違うのかなって。だからいつも通りそういうところを気を付けてます。あとはフレームは加工したくなかったんで、これは一切手を付けてませんね」
74スプリンガーフォークを2インチ伸ばし、ネックカップで3度寝かしたネックに装着。前後18インチホイールには、若干割高だったリアフェンダーを分割加工して双方にセット。フェンダーチップやテールライトボディはアルミ板を叩きアールを作って溶接、馴染みのこなれた技巧でこさえたものだ。
そして、ETCを内部に収めたフロントカウルやメーターダッシュパネルといったハンドメイドの造作物からも目が離せないが、6つ穴を空けて黒染めしたボルトやマイナスネジの選択といった微小なパーツへの美意識も絶品。ボルト1本にまで抜かりない作り手は総じて、物作りへの思慮も人一倍深い。
どんなカスタムスタイルも好きだと話す氏は、その中でも地面近くを走るもの、車高の低いバイクが好きだと目を細める。目の前には、その時代の光景に想いを馳せ、ありったけの礼儀を尽くしたカスタムが品よく腰を据えている。
HARLEY-DAVIDSON U 1939 DETAIL WORK
FRONT COWL
アルミ板から成形したカウル内にETCを収納。フロントフェンダーはリアフェンダーを分割して加工したもの。
GAS TANK
純正の雰囲気を損なわないよう細くコンパクトに製作。ダッシュパネルやハンドシフトなどの造形物が映える。
FOOT CONTROL
スロッテッド加工したフットコントロール。ステップマウントは意匠を凝らしたボルトやマイナスネジで固定。
PRIMARY COVER
プライマリーカバーはフレーム同様にダークブラウンに。車体の雰囲気に合わせて荒めのスリット加工が入る。
MUFFLER
純正サウンドに近付けたマフラー。通常はミッション下を通して2イン1にする所を敢えて上で連結させた作りに。
REAR FENDER
割高だったリアフェンダーをショートカットして成形。テールライトボディはアルミ板で単一製作したもの。
BUILDER’S VOICE
WRENCH MOTORCYCLE
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