YAMAHA XS650 SPECIAL 1980
KURUMAZAKASHITA MOTOCYCLE
贅を尽くした
濡れ色のこだま
2018年度の横浜ホットロッドカスタムショーにおいて、国産車部門のトップを意味する『Best Motorcycle Domestic』に輝いたヤマハXS650スペシャル。骨格のフレームを彩るスネイクブルーの塗装に始まり、眩いばかりのメッキされたタンクやリアカウル。しかもその表面に彫金を施すという贅を尽くしたメニューは、正にショーカスタムと呼ぶべき真っ当な一台だろう。
「こういう感じのカラーバランスというのは最初にあった。全体的になんか光ってるというか。そういうのがぼんやりとあって、色以外のところは結構作りながら変えていったというのがあるかな」
まず2本から1本化したサスペンションで華々しくファンファーレを飾り、マフラーはオーナーの鶴の一声で最後の最後で2本出しから1本出しへと改案。ガスタンクは既製のピーナツタンクを全部で6分割して再度つなぎあわせ、わずかに長く、前部を大きく変形させたものだ。しかしそれだけでは飽き足らず、更にタンクの中央とメーター周りにアクセントのオーナメントが添えられる。
「見られた時にノーマルと思われるのが嫌だったからそうしてる。あとはタンクの留め方とか、シートカウルもそうだけどいちいちそういったステーまで見られることを意識して作ってるかな」
正直このガスタンクの造形を見て一体何人がノーマルと感じるだろう。はたからすればどこから見てもワンメイクの仕事だが、店主の野呂さんの感覚からはそれが自然な思考。つまるところ、その遠い次元のクリエイティビティに氏の感性が照らし出されている。
見せるではなく、『魅せる』。製作にあたってオーナーと一致した意見だった「何か面白いことをやろう」というテーマにのっとり、メッキされた外装の宴は花盛り、それに各セクションの装いも追従。前後のホイールは図面から引いて鉄を削り出した一品物で、またハンドルの下側とヘッドライトステーを丹念な共締めのデザインとして忍んだ箇所への配慮も怠らない。
そしてシート下の左側に移設したブレーキマスターや、SR用を加工したスイングアームなど多分にアイキャッチを狙った部位も合わさり、ググっと小気味よい振動を持って見る者を引き込んでゆく。
瞬きもしないで、ガラスケースに額を寄せて、でもガラスが曇るのを怖れて息を止めて、ひたすらじっと見つめ続ける。濡れ色で発光するバイクを前に、なんだか小さい頃のそんな記憶が蘇る。
YAMAHA XS650 SPECIAL 1980 DETAIL WORK
FRONT FORK
2インチロングのインナーチューブを挿入。純正アウターチューブの上部にはスリットデザインを入れて加工。
GAS TANK
ピーナツタンクを使い6分割して成形。両サイドに精緻な彫金を施し、中央などに飾りのオーナメントを付加。
SUSPENSION
サスはノーマルの2本から1本へホワイトパワー製に仕様変更。フレームには隈なくカラフルな塗装が入れられる。
MUFFLER
マフラーは2本出しで進めていた物を最後に1本出しへ改案。こうした作りながら変えていった箇所も多いと言う。
SWINGARM
SR用のスイングアームを延長。マフラーやステップステーなどは同店が得意とした動的デザインで統一する。
SEAT COWL
丸みのある物を鈑金してメッキするのは大変だと話す。ぷりっとしたシートカウルの中の空洞にはETCを内蔵。
BUILDER’S VOICE
KURUMAZAKASHITA MOTOCYCLE
住所 | 埼玉県越谷市南荻島4015-9(Google MAPを開く) |
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電話 | 048-940-5118 |
WEB | KURUMAZAKASHITA MOTOCYCLEのウェブサイト |
営業時間 | 10:00 ~ 20:00/11:00 ~ 18:00(カフェ) |
定休日 | 木曜日、第3日曜日 |