HARLEY-DAVIDSON FL 1979
ROGUERIES METAL WORK
あえてのチョイス
ステンで仕留めた倍返し
顔全体をほころばせて、張りのある声で出迎えてくれた齋さんは、まったくもって人好きのするタイプである。会った瞬間に、「ああこの人は先輩後輩関係なく、きっと両方から愛されてんだろうなぁ」、と直感的に分かる人間味溢れた人柄だ。
が、そんな氏の第一印象とは裏腹に、手掛けたチョッパーは緊張感漂う、ゴリッゴリのハードコアである。見せ球無しの直球のフリスコスタイルは、360度、どこにも付け入る隙が見当たらない。鉄壁のガードで固めた理想的なシルエットは、スキモノを唸らすに十分な魅力に満ちている。
「乗りやすいのと、オーナーがMCのプレジデントなんでその辺は考えて作ってます。こだわってるのはステンレス加工ですか。命に関わるような所以外はほとんどステンで製作してます」
腐食せず独特の輝きを長くキープするステンレスは、鉄とは違い、傷が付いても溶接で元通りになるメリットを持っている。今回はそうしたメリットを活かして、マフラーやシッシーバー、エンジンハンガー、チェーンカバー、ステップ、そしてボルトに至るまでを徹底的にステンで統一。高度な加工センスの後押しで、ご覧のワンランク上のフリスコスタイルにメイクした。
「ステンは力がかかる所には使わないんですよ、一回曲がると元通りにならないんで。あと硬くて折れやすいのもあるから、重量がかかる所には使わないようにしてます。でもこのオーナーさんは二人乗りしないんで、シッシーバーもステンで作ってますね」
鉄とステンの違い。それは鉄は軟らかく、削るのも早いが、ステンは材質が硬いためにそう簡単にはいかない。加工が大変で、削り一つとっても鉄の倍近い時間がかかってしまうのである。そうした理由もあって多くのビルダーが鉄を選ぶところを、今回は敢えてのステン勝負。SUS304のステンレス鋼材を熟知したビルダーによるメタルワークは、錆びることない普遍的な美をもたらす。
「でもまちまちですよ。鉄のメッキの風合いが良いって人もいるし、ステンのくすんだ輝きじゃなきゃ嫌という人もいる。だからその都度使い分けてる感じです」
聞けば、加工物で大変だった箇所は特別無かったと言う。いつものように、持ち得る技術を駆使した結果が、この、堂々たるチョッパーである。ビルダーズ・ビルダー。同業のプロショップからも一目置かれた存在のテクニカルフライ。屋号に掲げたメタルワークは伊達じゃない。
HARLEY-DAVIDSON FL 1979 DETAIL WORK
FRONT FORK
ほどよく伸びたフロントエンドは、39φフォークの6インチオーバー。フレーム下部のカチ上がり具合も絶妙。
FRONT WHEEL
フロントは21インチの出所不明の米国製インベーダーホイール。ブレーキキャリパーはPM4ポットを装着。
GAS TANK
タンクは鉄でワンオフ。外注も受ける同店によるペイントワークはオリジナルのフレイムスラインがポイント。
OPEN PRIMARY
2インチオープンのプライマリーにステンで製作したフットコントロール周りをセット。ハンドシフトもステン製。
MUFFLER
マフラーも鉄ではなくステンでワンオフ。エンドをターンアウトにしたデザインでカチッと作り込まれる。
REAR WHEEL
ホイールにMCペッカーズ製の16インチインベーダーを履かせ、アクスルシャフト周りはステンでワンオフ。
BUILDER’S VOICE
ROGUERIES METAL WORK
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