HARLEY-DAVIDSON XLH 1973
SUICIDE CUSTOMS
優美なクリエイションに潜む
尋常ならざる情熱
2016年10月にドイツで開催された、世界最高峰のカスタムショーAMD WORLD CHAMPIONSHIP で頂点に輝いたマシンである。その名も、RUMBLE RACER。名立たるカスタムビルダー同士が投票し合う公正なこのショーで、2位との差を大きく開けて手にした栄光である。
製作は、メディアへの露出が少ないスーサイドカスタムズ。謎に包まれた部分の多い同店だが、代表の坂口さんは淡々と、そして丁寧にこのマシンのディテイルを説明してくれた。ココからはその全貌を仔細に追って行こう。
まず、1973年式XLHがベースではあるが、ホイールとキャリパー以外はほぼワンオフのフルスクラッチである。「ショーで勝てるバイク」をテーマに、文字通りフレームからスプロケットに至るまでが一品製作された。
車体の右側のみでなく左側にも見せ場があるようにと、アイキャッチも狙ったエンジンはリアのヘッドをひっくり返してFCRキャブを装着。左右2基掛けのスペシャル仕様で、エキゾーストも左側から取り回されたものだ。そしてまた、見てくれだけではなくヤマハSRのインシュレーターを使うなど、普通にセッティングが出せる仕組みにも抜かりは無い。
タンクひとつ取っても気が遠くなるかの労力が費やされている。1.2ミリ厚の鉄板でタンクのアウトラインを形成した上で、上部とサイドそれぞれに加工を実施。上部のデザインはレーザーカットしたパネルを数枚重ねて溶接したもので、サイドはアルミブロックから3D形状に削り出した物を専用のジグで測定した上で装着。しかしそれでも熱などで歪みが生じてしまう為、何度も曲げて角度を合わせた上でようやく仕上げられたものだ。
オイルタンクとリアフェンダーに関しては、なんと一度作った物を砂型の鋳造で作り直したものである。その理由は手作り感を出すためで、どれほど綺麗に仕上げてもビレットのセクションが行き過ぎると、機械さえ持ってれば誰でも出来てしまうと誤解されるのを避けるためだ。こうしたショーでは伝わり難い箇所を排除し、二度手間であろうとも敢えて巣穴を作ってハンドメイド感を出すというのが知られざる表現法である。
そして、エキゾーストだって容赦ない。チタンパイプを手曲げで仕上げた物を、今度はそれをわざと切り刻んで溶接。ショーが行われる欧州ではガレージビルドが注目されているため、それに合わせて一番アピールしたい荒々しい溶接跡を残してフィニッシュされた。
凄い話である。ビルダー坂口さんがその手の仕上げを好まないのは瞭然だが、勝ちに行くにはここまでハードコアにならざるを得ないのだ。一時は現地でエンジンに火が入らず、出展条件すらクリア出来るかが危ぶまれたRUMBLE RACER。しかし、その想いを乗せた夢は、見事に結実した。
HARLEY-DAVIDSON XLH 1973 DETAIL WORK
FRONT FORK
ドラッグスター250をベースに、ボトムケースからトリプルまで全てマシニングで削り出したパーツでリメイク。
GAS TANK
上部はレーザーカットしたパネルを一枚ずつ重ねて溶接。サイドパネルはアルミブロックからの削り出しだ。
ENGINE
リアのヘッドをひっくり返してFCRを装着。荒々しい溶接跡が残るエキゾーストも左側から取り回される。
OIL TANK
鉄で作った物を再度砂型の鋳造で製作して面出し。シートは交流のあるBILL WALL LEATHERのワンオフ。
MUFFLER
目に入る部分はすべてワンオフ。エキゾーストは一度作った物を切り刻んでわざと荒く仕上げる表現法である。
REAR AXLE
上側のフレームはタンク同様のパネル処理を実施。スプロケットローターに至るまでがワンオフで製作される。
BUILDER’S VOICE
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