KAWASAKI 500SS MACH Ⅲ 1976
FINE STYLE

まさかの出会いに乾杯
2スト3気筒の千里浜仕様

意外な組み合わせのマシンだ。日本が世界に誇る名車、カワサキ・マッハⅢがベースのトラッカーである。そして見ての通り、タンクやシートなどの外装はカワサキTR用を敢えてそのままポン付け。手の込んだ作りで主張するのではなく、描いたアイデアを具現化したカスタムだ。

店主河瀬さんの愛車であるこのマッハは、近年盛り上がりを見せる石川県千里浜のサンドレース、『千里浜サンドフラッツ』に向けて製作したものだと言う。逆輸入車の’76年式500SSマッハはファンの間で珍重される代物ながら、ノーマルフォルムへの未練を微塵も感じさせないスタイルチェンジが痛快だ。また、TRのポップなエクステリアの内に秘めた、2スト3気筒のホットな乗り味に作り手のユーモアが覗く。

「やっぱり見て欲しいのは全体の雰囲気でしょうか。マッハって走り系のカスタムに行くことが多いですけど、敢えてのトラッカーにしてますから。あとは特徴的な2ストエンジンと、クロスになったチャンバー周りですかね」

決して流暢に言葉をつなぐタイプでない氏は、ひと言ひと言噛み締めるかのようにポイントについて語る。

「そのままペイントも変えないでTRのパーツを使ってます。元々トラッカーの流れがあるモデルだからその流れを汲みたかったというのがありますね。それにそのまま付けて、『あれ何かな？』という感じも出したかったんで（笑）」

店の軒先には国産シングル系からアメリカン、ハーレーまでがずらりと並び、同店の広範な嗜好を如実に現わしている。そして、その多岐に渡る素材の中から抽出したアイデアでディテイルは固められた。

しかし、ひとつずつ取り付けた部品を訪ねても、「どこどこ製の何々」という明確な返答は少ない。なぜなら、店の中にある、つまり自分のフィールド内に転がるベストな物でほとんどを構成した一台だからだ。河瀬さんの愛車であることも考えれば、若干の飛躍こそあれ、ファインスタイルを象徴するトラッカー・マッハとも言えるだろう。

「今まではハーレーのWLで出てたんですけど、今年の千里浜はこのマッハで出る予定。エンジンも一応オーバーサイズのピストンを入れて面研してるし、なるべく低速から行けるようにセッティングも出してるんで。まあそもそも、そのために作ったバイクですから（笑）」

HANDLE

サンドレース出走を前提にしたバイクゆえハンドルはトラッカーバーを選択。汎用タイプをそのままセット。

HEAD LIGHT

国産汎用のヘッドライトをサイドマウント。スロッテッドで肉抜きされたステーは店にあった物を流用する。

FRONT WHEEL

タイヤはブロック飛びを抑えた、本場アメリカのダートトラックレース直系のダンロップK180Fを履かす。

GAS TANK

カスタムポイントのひとつである純正スタイルのカワサキTR用タンク。敢えてノーマル状態で使用した箇所。

MUFFLER

海外製のクロスタイプのブラックチャンバーを装着。さり気ないマウントが逆にアクセントとして効く。

REAR SHOCK

出所不明の店にあったというリアショック。当時の雰囲気で作られたデザインに惹かれて付けたパーツだそうだ。