H-D EVOLUTION 1995
HOT SPICE CUSTOMS
見せつけない工程に宿る
完成された美意識
「ヤリ込んでるところを見せたくなくて、サラッとした感じにしたかったんですよね」と語り出す『HOT SPICE CUSTOMS』の笠井さん。フリスコではなく、オーソドックスなチョッパー。しかしシンプルなカスタムマシンほど、見るものが見ればその手の入れようがわかる。笠井さん自身、「これまで製作してきた中でもかなり手が込んでいる」と言う。
カッコいいカスタムができたからショーに出展するのではなく、ニューオーダーのために作り上げたチョッパーだ。
まず骨格はパウコ製フレームのエンジンハンガーに手を加えつつ、リジッドに変更。ガスタンクはスプリンガーに合わせてナローに作製。ピーナッツタンクを幅詰めし、モールディングを加えた。
リアフェンダーはオーセンティックな仕様に見えるが、マウントを加工しつつもそれを主張せず、あたかもそのまま汎用品として存在するリブフェンダーのごとく仕上げた。
シートはチョッパーの王道となるキング&クイーン。理想とするフォルムを追い求めているのでシートベース、ウレタンフォームは笠井さんが成形し、シートの生地貼りだけを外注。シッシーバーもシートに合わせて単品製作した。
フロント周りから、頑なにナローなラインで攻めてきているので、リア周りもすっきりスレンダーに仕上げるという美学が見え隠れするマフラー処理。リアフレームの内側を通すというトリッキーな取り回しのマフラーは、5~6ピースのパイプを繋いでいるが、滑らかすぎて継ぎ目を発見することはできない。
その滑らかさはフットコントロール周りにも見ることができる。ベースは旋盤で削り出すが、さらにサンダーでヌメっとした有機的フォルムに追い込む。頭の中にある理想像を具現化するためには、作業工程が増えることを苦にしない。
このチョッパーが有機的に見えるポイントとして、溶接ではなく、多くの箇所をロウ付けしていることも起因する。「ロウ付け自体は、慣れてしまえば普通の溶接と同じ感覚でいける」と笠井さんは簡単にいうが、決して簡単な技術ではない。
溶接で接合し、パテ埋めする。またはロウ付けで仕上げる。あとから塗装してしまえばどんな技法が用いられたかなどわからなくなるし、誰も方法論に気を留めない。しかし、パーツによって溶接orロウ付けと思慮深く手法を変えていくのは、こだわり以外のなにものでもない。
ヤリ込んでいても、それを見せつけない美意識。こうして成熟したチョッパーが完成する。
(文/野上真一)
HARLEY-DAVIDSON EVOLUTION 1995 DETAIL WORK
HANDLE
タイトなハンドルはワンオフ。ジョッキーシフト&フットクラッチ仕様のため、ハンドル周りはよりシンプルに。
FRONT FORK
9インチオーバーのスプリンガー。本来、癖が強いはずのツイストレッグだが、さりげなさを感じる佇まいだ。
GAS TANK
鉄棒をモールディングしたナローなタンク。落ち着いた茶系のキャンディーカラーにより、やりすぎ感は見えない。
ENGINE
ロッカーカバーとカムカバー、ポイントカバーには神戸のシルバースミスフィンによる緻密な彫金が施される。
MUFFLER
マフラーはリアフレーム内を通過し、ナローなスタイルを強調。まるで懐に隠し持ったショットガンといった趣だ。
SISSY BAR
細いリアフェンダーがシートを支えられるのも、シッシーバーとの一体感も、全てワンオフだからこそなせる造形。
BUILDER’S VOICE
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