H-D UL 1940
BIKE GARAGE KOKORO
原点を見つめ直す
美なるアンチテーゼ
仕込みの時間からして違う。一昨年の2021HCS(横浜ホットロッドカスタムショー)が終わるや否や、早くも今回の2022HCSに照準を合わせて動き出していた。そう、作り手の熱量が圧倒的である。しかもその熱量を形にする技量がものの見事に付いて回る腕利きときている。
店主の内田さんが煮詰めたのは、『美』と『原点』をテーマにしたULだ。簡単なようで難しい『美』の表現と、自分を見つめ直し立ちかえるべき『原点』に正面から向きあって作り上げたものだと言う。
「なんか僕から見てると今のカスタム業界ってちょっとおかしいというのか、違うんだよなあっていうのがあって(笑)。そういう意味でもこういう原点に戻ったバイクで何かパンチがあることをしたかったんですよね」
見せ場的には、フレームワークに氏の鋭気が詰まっている。ここでは通常の真円パイプと、テーパーさせただ円パイプが共存。ネックチューブやリアアクスル下側のパイプはだ円とし、更にそこを曲げてラウンドさせるというトリッキーな意匠がこらされた。
また、シングルダウンチューブをそのままエンジン下に回そうとすれば地上高を稼ぐためにどうしてもエンジン位置を上げないといけない。でもそれだと全体のバランスが崩れることから、ダウンチューブ下で宝飾も兼ねた二枚のプレートを介して左右へと分岐。一連の流れるようなラインが絶景である。
「難易度ですか? まあやってみるとこれ結構なことだと思うんですよ(笑)。でも僕は楽しんで作ってたんであれですけど。あとVLベースのフォークもえぐれてる所にティアドロップの長い作り物を入れてるんです」
それは、光が当たった時にその部分が発光するように見せるためだ。更に横に黒い線が走ることでシャープな印象を与えることも出来る。それを狙ってメッキの光と影にアプローチしたそうだ。作り物だけでなく演出全てにおいて、ここまで踏み込んだ思考のもとで作業を進めるのが内田さんの円熟した素養である。
かたや、タンクやフェンダー、シートなどの造形もさることながら、そこに埋め込んだオーナメントの加工難度も相当だ。でも、そうしたテクニックに視点を向けさせるのは氏の本望ではない。全体を見るほどに「なにこれ?」と宝探しのようなワクワクをさせられるか。そして、そこにオートバイとしての『美』が宿っているか。それがすべてであり、業界を俯瞰して見た作り手のイデオロギーである。
HARLEY-DAVIDSON UL 1940 DETAIL WORK
HANDLE
美しく、そして走りを予感させるハンドル周り。ライザーに至るまでが単一でブラスマウントがアクセントに。
GAS TANK
全体の流れに沿ったシェイプに無駄はない。ガスキャップ下のオーナメントなどさり気だがその加工難度は高い。
DOWN TUBE
シングルダウンチューブは下側2枚のプレートを経由して左右へと分岐。ハンドシフトの造形も美に包まれる。
MUFFLER
洗練されたディテイルに隙は無い。主張せず存在感を醸すオイルタンクやシンプルなマフラーなどを配備。
REAR AXLE
リアアクスル周りのフレームはテーパーさせただ円パイプで緩やかなラウンドが入る。ホイールはワンオフ。
REAR END
お家芸となる流麗なフェンダーステー。フェンダートップには同じくオーナメントを埋め込みデザインを統一。
BUILDER’S VOICE
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