BMW Motorrad HP2 Sport 2008
CHERRY’S COMPANY
機能的に順応する
ウェットカーボンの大義
高みに君臨する技巧派が仕上げたBMWのHP2スポーツである。国内指折りのカスタムビルダーとして鳴らした黒須さんの新作は、カーボンとアルミパーツのコントラストが艶めく一台だ。
イメージ的には自身の胸の内にしまっていた’80年代がデザインソースだと言う。かつてのグランプリレーサー、カワサキKR500といったあの辺のボリューミーな要素を取り入れて、あまりスタイリッシュなフォルムに寄せ過ぎないよう全体のラインは整えられた。
そして、目を注ぎたいのはウェットカーボンを使用したエクステリアだ。一般的にはドライカーボンの方がクオリティが高いことで知られるが、今回ウェットカーボンに真空引きという工法を取り入れることでドライカーボン同様の強度と軽量化を実現している。
また、樹脂材に関してもポリエステルとエポキシ系の2種類がある中で、値段は張るもののより製品精度と強度の面で優れるエポキシ系を採用。それは、「自分が出来る限りのハイスペックな仕様でこのバイクを作りたかった」という考えからだ。
既成のカーボンパーツではなく、このマシンのために全てをイチから準備するということ自体が離れ技である。ハイスペックを担保しながら、金属ではないカーボンパーツのワンオフという新たな領域に踏み込んだのはやはり、業界の未来を担うトップランナーだった。
一方、水際立ったアルミによる鈑金加工も死角がない。例えばシートカウルだが、叩き出しで成形したシルエットもさることながら、左右のサイレンサー留めホールの処理がまた一興(いっきょう)。クリーンな装いになり過ぎるのを嫌い、敢えて溶接ビード痕を残すためにまずは点付けとし、全体を1000番で磨いた後に本付けするという手間のかけようである。
しかしこうした発想に始まり、グリップエンドやピボットカバーといった純正品と違和感なく溶け込む小物パーツなど、物作りの次元がいかついのは今に始まった話ではない。バイクの良し悪しを見極めた上で、そこに更なる旨味を加えて一級品を膳立てしてゆくのが黒須さんの流儀だ。
「元々のスペックが高いからその部分は全部活かしてます。あとは無駄な物を付けるのが好きじゃないので全部機能的になるようにかな。機能的なものがデザインの一個になってるのが良いと思うんですよね」
頭にあるのは、研ぎ澄ましたボディの美学。そこにハイスペックのパーツが順応することで、描いたシナリオは完結する。
BMW Motorrad HP2 Sport 2008 DETAIL WORK
FRONT COWL
真空引き工法で製作したウェットカーボンのカウル。アルミ製トリム下にハイビーム連動の補助ランプが付く。
FRONT FENDER
同じく単一で造作したフロントフェンダーはメッシュ部がアクセントに。ホイールはアルミ鍛造の純正品。
BODY COWL
約3ミリの鉄棒を曲げて大枠をデザイン。そこに発泡ウレタンを吹き原形を作った上でカーボンで製作に入る。
FRAME
フレームには手を加えず色味のみニッケルメッキ処理。下のピボットカバーはグリップエンド同様にワンオフ。
UNDER COWL
主要パートは鉄棒と発泡ウレタンで大枠を作った後にカーボンで製作。フロントカウルはFRPを貼って下準備。
REAR COWL
アルミ叩き出しで成形。溶接ビード痕を残すためサイレンサー留めホールは1000番で磨いた後に本付けで溶接。
BUILDER’S VOICE
CHERRY’S COMPANY
住所 | 東京都練馬区関町北1-2-4 |
---|---|
電話 | 03-6767-8803 |
FAX | 03-6767-8809 |
SHOP | CHERRY’S COMPANYのショップ紹介 |
営業時間 | 10:00 ~ 19:00 |
定休日 | 水曜日 |