H-D FLH 1956
TRADITION CUSTOMZ
黙って詰め込んだ
最愛のストーリー
幾多のプロショップで場数を踏み、独立後も淡々と腕を練り続けている。職人気質という表現があってるかどうか分からないが、からりと乾いた男っぷりが妙に板についた店主だ。このチョッパーはそんな北野さんの人柄が見え隠れする、アメリカの空気感を体現したかの一台である。
「僕日本人が作るチョッパー大っ嫌いで、だから日本人の真面目さは残しつつアメリカっぽいバイクにしたかった。大好きなんですよね。アメリカ走っててアメリカにあってもいいようなイメージですかね」
いきなりのカウンター的発言に面食らうが、それがまた実に痛快だ。ともすれば誤解されかねない内容だが、氏が話せば不思議とすとんと胸に落ちてしまう。駆け出しじゃない成熟した玄人であり、労苦をたっぷりとなめてきた男の言葉はやはり切れ味が良い。
テーマは、オーナーの希望だったワイルドなチョッパー。そしてそのお題目を形にするにあたっては、昨今のヴィンテージバイクの希少性もあって、アンカットですぐ純正に戻せることを念頭にカスタムは進められた。
「一番気を付けるのはまずお客さんに似合うこと。それと要望をなるべく聞くこと。このオーナーさんはサーファーなのでそういう雰囲気を混ぜつつ、ガレージビルドっぽくですね。だから塗装もエナメルの缶スプレーでベーッて塗ってます」
一方、作り物に関しては、一見汎用に見えるマフラーはワンオフで製作。フロントとリアエキゾーストの離れ具合と立ち上がり角に留意して作ったそれに、’70年代のスーペリアサイレンサーをセット。また、ツイストの要望には絶妙なさじ加減で応えている。
全体的にツイストを施すとやらしくなると考えた氏は、わずか1点のみに施行。しかもそれはリアフェンダーステーと合流するシッシーバーの一部分である。この、ことさらアピールするわけでもない一歩引いた燻(いぶ)しの美学が作り手の立ち居振る舞いとリンクする。
「ほんと飽きが来ないように作ってます。作ったら終わりじゃなくて、その後もいろいろカスタムしたくなるようなバイク。僕もそうだしお客さんにもそういう楽しみ方をして欲しいかなって」
すぐ純正に戻せるようにフレームはアンカット。そして、フレイムスと同色の黄色の配線は隠すのではなくデザインの一部としてカーリング。旧車へのリスペクトと、アメリカのリアルなチョッパーに見られる洒脱な作法。氏が大事にする世界観はつつがなく黙劇されている。
HARLEY-DAVIDSON FLH 1956 DETAIL WORK
HANDLE
ハンドルとライザーはメーカー不明品でピンと来た物を選択したとのこと。カーリングさせた配線がポイント。
FRONT FORK
フォークはアイアンスポーツ用レイトモデルの33.4φを装着。ヘッドライトはオーナー持ち込みのルーカス製。
GAS TANK
タンクはヴィンテージのワッセル製。ガレージビルド感を出すために塗装はエナメルの缶スプレーを使用する。
ENGINE
ストックをリビルド。外されがちなホーンは敢えてキープ。この辺の玄人的趣向が全体に吹き込まれている。
SEAT
シートはリバーシート製のエイジングタイプ。わずかに後方を上げたリアフェンダーはNOSのセブンティーズ品。
MUFFLER
エキゾーストをワンオフしスーペリア製サイレンサーを実装。シッシーバーの一ヶ所だけにツイストを施す。
BUILDER’S VOICE
TRADITION CUSTOMZ
住所 | 千葉県匝瑳市飯倉1515-1 |
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電話 | 080-5004-9546 |
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定休日 | 不定休 |