H-D FLH 1979
SATISFACTION
誇るべき歴史を踏襲しつつも
アップデイトを続けるその姿勢
ふと工場を見渡せば、ハーレーのサイドバルブのチョッパーを造る横で、最新モデルのM8ブレイクアウトがリフトに載っている。そんな守備範囲の広さを見せるのが、大分の『サティスファクション』。
今回ビルダーの山口さんが挑んだのは、四半世紀前にチョッパーシーンを賑わせた往年のカスタムだ。
「25年くらい前に一世を風靡したスタイルがあって。それがグースネックなんですけど、その頃は僕も見様見真似で作ってましたね。でも去年かな、お客さんから製作を頼まれて20年ぶりに造ることになったんです」
オーナーからのオーダーは、グースネック、モーターはショベル、カラーは黒。その他は氏に一任された。
「当時グースネックを作った時に、やっぱり乗りにくい、ハンドルが切れちゃう、という点が気になっていたので、今回は対策としてネックは短めに、前に伸ばしすぎず、あとはハンドルの切れ角も気をつけましたね」
『グースネック(=ガチョウの首)』と称された往年のルックスは継承しつつ、乗りやすさを追求。20年という時間を経たアップデイトがこのマシンには詰まっている。
フロントエンドは定番の74スプリンガー。山口さんの経験上、吊るしの状態はアームの動きが悪いため、再調整を行なっている。これはサティスファクションでスプリンガーを取り扱う際のセオリーだ。
タンクはパウコのナローマスタングをベースに、幅詰めとトンネル加工を実施。グースの場合フレームのメインチューブがアールを描いているため、タンクを上手く載せるのは苦心したポイントだったそうだ。
次いで、タンク左下にはミニメーターを設置。真鍮製のメーターステーは同店定番のオリジナルアイテムで、このパーツを含め、車体各所に見受けられる真鍮の鈍色が、黒い車体への差し色として活きている。
当時のスタイルを演出する重要なファクターの一つであるシートは、山口さんが長らくストックしていたバックドロップ製。それを同じく大分のレザースミス『ディアストック』が張り直している。
定番を押さえたグースカスタムながら、リアセクションには山口さんらしさが香るパートがある。リアフェンダーの片持ち仕様がそれで、氏は「左右非対称が好きなんですよ」、と話す。
かつて日本のカスタムシーンで隆盛を極めたグースネックというジャンル。サティスファクションのスパイスを加えて再び産み落とされたそれは、懐かしい雰囲気と新しい空気感の両方をまとっていた。
(写真・文/マツモトカズオ)
HARLEY-DAVIDSON FLH 1979 DETAIL WORK
HANDLE
黒でまとめた精悍なビジュアルはもちろん、乗りやすさを求めて切れ角などに留意して制作したハンドル周り。
GOOSE NECK
流麗なアールを描くグースネック部分。かつてカスタム界に旋風を巻き起こしたスタイルは今なお新鮮だ。
BRASS PARTS
銅管のオイルラインやマフラーエンド、キックペダルなどの真鍮の色味が、モノクロームな車体に色を添える。
SEAT
バックドロップ製のシートはマシンに当時の雰囲気を醸し出さす重要なファクターのひとつ。無二のデザインだ。
FENDER STAY
リブフェンダーを片持ち仕様のフェンダーブレスがホールド。真鍮色が目を引くチェーンガードはワンオフ。
WHEELS
前後ともFLH純正ホイールを使用。リアのキャリパーは純正バナナ、フロントは小ぶりなPM製をチョイス。
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