H-D SHOVELHEAD
MOTORCYCLES FORCE
濃淡に小技を散らした
オールドスクールの波とう
ことオールドスクールのチョッパーを扱えば、深々と地に足の着いた安定感を見せるカスタム屋である。コンパクトなシルエットの中で躍動する作り手の本気は、決して前面にしゃしゃり出ず裏方に徹するからこその風韻がある。ビルダー久保順平。往年のフリスコスタイルの流れを汲み、それを日本の風土に合わせてブラッシュアップさせた当主がその人だ。
「エンジンとスタイル的なもんとの両方がポイントですね。デルクロンのクランクケースにビッグボアを組んだチューンドエンジンの面白さもあるし、チョッパーとしてのキレイさもそうですね」
エンジンにストリートユースを前提とした排気量1500ccのモーターを搭載し、スタイル的にはオールドスクールの中にも細やかな造作を導入。見るほどに作り手の芸当が散らされている。
まずガスタンクなどがその好例だろう。大幅な加工は成されていないエッグタンクだが、マウント方法に注目したい。通常ネジを締め込んでいくとその頭が残るのが普通だが、それだと塗装が割れてしまうために頭まですっぽり埋め込んだ作りに設計。また更に、タンクとフレームの接地面には切り出した革を挟んで万策を講じている。
一方、フレームネックからダウンチューブにかけて鉄板を切り出して貼られたガセットも冴えている。デザイン的なものと補強との双方を兼ねていると言うそれは、ワンポイントとしては相当の威力だ。目立たせて人目を惹くのではなく、一連の流れの中で自然と目を留まらせるという大人の作法がなんとも無駄がない。
次にリアフェンダーステー。角棒を部材に使い、全部でスリーピースから構成。アールを付けた上にツイストの入るデザインは、まず角棒をネジることから始まり、その後に曲面にしたいところをゆるやかに曲げていき、角を削ってスムースに成形。ここでもやり過ぎればかえって全体のバランスを崩して逆効果になってしまうため、ほどよい加減で着地させている。
そして、ラデン(※貝殻を使った装飾技法)とシルバーリーフを使ったペイントワークである。シルエットを際立たす上品な濃淡が氏の造作物とアウンの呼吸で溶け合い、しっとりと艶やかな趣を与えている。
「シンプルな方が良いですけど、それだと味気ないんでちょっと造作に小技を入れた感じです(笑)。でも一ヵ所どこかが突出してるものよりも、全体としてまとまりがあるスタンダードな感じが好きですね」
HARLEY-DAVIDSON SHOVELHEAD DETAIL WORK
FRONT FORK
フロントに74スプリンガーを装着。21インチのビレットホイールとキャリパーに信頼性の高いPM製を選択。
GAS TANK
エッグタンクのキャップ部分を加工。取り付けにはボルトの頭が埋め込めるように設計し、塗装割れを防止する。
FRAME GUSSET
デザインと補強を兼ねて切り出した鉄板を溶接して均す。アートワークはカミカゼピンストライプが担当。
ENGINE
デルクロンとS&S製をセットした1500ccエンジン。プッシュロッドカバーはシルバースミスフィンが製作。
SEAT
全体のフォルムに合わせたソロシートを設置。シート下はスムージングされ、フレームにはピンラインが入る。
FENDER STAY
全スリーピースで構成された手の込んだ箇所。角棒を部材にしてアールとツイストを入れたデザインに成形。
BUILDER’S VOICE
MOTORCYCLES FORCE
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