H-D S&S KNUCKLEHEAD
MOTORI GARAGE

連続的符号を解きあかす
フリースタイルダンジョン

「もともとお客さんから1200ccのチョッパーでと言われてたんですけど、その時に中々手に入らなかったんです。それで93cu.in.（1525cc）ならありますって話したら、それで全然大丈夫みたいな始まりでしたね」

街中をさらりと流せるオールドチョッパーの扱いに長けた、仙台『モトリガレージ』のナックルヘッドである。そして、実は今回のチョッパーがオーダーを受けてイチから製作するラストのもので、そうした意味ではメモリアルな一台でもある。

今後はオーダーメイドではなく、自社で製作したチョッパーを気に入ってもらった人に販売していく手法に舵を切った同店だが、その決定と同時に滑り込んで来た依頼であった。

「打ち切ったあとの最後の分ですね（笑）。こういうのに乗りたいという画像をもらってそのテイストに合わせていった感じです。ただ所々変わっていったので最初もらった写真と完成形が近いかといったらそういうわけでもないです」

差しあたりモトリガレージに関して言えば、みなまで言う必要はない。ざっくり希望さえ伝えれば後はイメージ以上のものを大成してしまう。感が良い上に舌が肥えているからよほどのことがなければ外しはないわけだ。ちまたでの打率4割5分の呼び声は伊達ではない。

ナックルのレプリカフレームに74スプリンガーを合わせ、前後に21／18インチホイールをセット。ハンドルは王道のエイプハンガーで、タンクはバナナタンクの幅を調整してリメイク。

マフラーやフリンジシートの選択も正攻法ながら、その全身との噛み合いには情趣がある。これらは計算してというより経験上こうしただけと、培ったバランス感覚によるものだ。

また、ナックルヘッドには珍しくセルモーターを目立たず配備している点もポイントだ。純正プライマリーカバーを付けたノーマルルックながら、秘密裏にセルモーターを搭載するというアブノーマルな感じが妙にいい。理不尽な上司にいきなり頭突きを食らわすような正義の意外性がそこにはある。

「実はこのエンジンかなり苦労したんです。ヘッドにいくオイル量を調整したり、うまく腰下側でリリーフできるような仕様に変えたり。バルブガイドも最初からちょっとゆるかったんでやり替えてますしね」

外装と内燃機の双方の仕事の質ともに、浮き沈みのない安定感だ。でもその優勢を説明するとなると、水の中の魚をつかまえようとしてもするりと指をかすめて逃げてしまうように、なかなか反すうするのは難しい。

HANDLE

市販のナローカニ足ライザーとエイプハンガーのオーソドックスな組み合わせ。全体との相性はすこぶる高い。

FRONT FORK

フォークにレプリカ74スプリンガーをセット。ヘッドライトはベイツレプリカでわずか上方にマウントする。

GAS TANK

バナナタンクの幅を詰めてリサイズ、容量10Lをキープ。グラフィックはピンストライパーのショーティが担当。

SEAT

シートベースは自店で作り、ウレタン加工をジミードープに依頼。レザーワークはTISS CUSTOM LEATHER。

MUFFLER

エイプハンガーのスタイルと調和するマフラーは、エキパイをワンオフ。サイレンサーは市販のアイアンタイプを。

SISSY BAR

フラットフェンダーを加工しトゥームストンテールを合わす。シンプルなショートシッシーバーは単一で製作。