
TRIUMPH STREET SCRAMBLER 2024
“TRAPEE”
HEIWA MOTORCYCLE
スクランブラー熟達者が創る
王道を逸する新機軸カスタム
バイク系の海外メディアで『平和スタイル』という単語が定着するなど、世界にその名が知られるカスタム専科、『平和モーターサイクル』。ショップを切り盛りする店主の木村さんにとって、新たなチャレンジとなったのが現行車をベースとした今回のプロジェクトだ。

ベースはトライアンフのストリートスクランブラー。往年のスクランブラーを彷彿とさせるシルエットを醸しながらも、エンジンは900ccの水冷、トラクションコントロールやABSなどのテクノロジーを兼ね備えたモデルだ。
「今までショーに出してきたマシンは1950~’60年代のベース車両で作ってきたので、配線などは自分の思うようにできたけど、現行車はそうはいかない。まずは配線や電装の配置を決めて、それから外装を作り始めるという、いつもと違う作り方になりましたね」と、木村さん。

過去にBMW RnineTやトライアンフT100など現行車ベースのカスタムプロジェクトを手掛けてきた経験から得たスキルや思考を存分に活用し、製作は進行していく。
現行車カスタムの難しさを語る上で、ビルダーを悩ませる事象の代表例といえば、インジェクションポンプだろう。
純正の大柄なタンクから細身のタンクに換装する際に生じるこの問題を、木村さんはシート下にサブタンクを設け、そこにポンプを据えつけるという技法でクリアする。

加えて、旧車とは比較にならぬ量の配線をメインタンク下に、そしてコンピューター系もシートカウルに絶妙のクリアランスで収める。一見して露呈しない苦心が、このシャープで美しいマシンの節々に秘められているのだ。
外装も見ていこう。これまでに様々なスクランブラーを製作、このジャンルの第一人者である木村さんゆえに、今回はあえて『外し』の思考でマシンを構成している。

「ベース車は現行車ながら古っぽいイメージのバイク。だから逆に、今回は現行寄りで、今まで見たことないようなオフっぽさを持つスタイルを提案してみたかった」
確かに、タンクのシェイプやシートカウルという選択など、スクランブラーの定番を外した演出が車体から読み取れる。

さらにお気づきだろうか。ベースはツインショック車だが、木村さんはモノサス化に踏み切っている。これによりマシンはさらに近代化し、またマフラーの軌道をナローにする手助けも兼ねている。
「今回はある種、ウチらしくなさも狙った」との言葉通り新鮮な外観だが、『平和』の変わらぬクラフツマンシップは車体の随所から滲み出ていた。
(写真・文/マツモトカズオ)
TRIUMPH STREET SCRAMBLER 2024 “TRAPEE” DETAIL WORK

HANDLE
ライザーやトリプルはワンオフ。ハンドルはレンサル製。車名の「TRAPEE」は”Trail Pigeon”を意味している。

FRONT FORK
木村さんがその見た目に惹かれたという特徴的なフォークはフォルセラ製。簡単にタイヤを脱着できる機構を持つ。

GAS TANK
シュラウドのようなエッジを効かせるなど、現行っぽいデザインのタンク。これまでとは異なる新鮮さが漂う。

SEAT COWL
アルミのシートカウルは、トラッカーのそれとは異なる流麗なデザインが特徴的。塗装はシェイキン氏の仕事。

REAR SUSPENSION
アルミのサブタンクには燃料ポンプを配置。リアサスはオーリンズ。ワンオフのマフラーはステンレスで製作。

SWING ARM
モノサス化に合わせてスイングアームは純正を延長。フレームと併せ、ライトグレーにペイントされている。
BUILDER’S VOICE
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