
H-D FL 1970
BOOTLEG
重ねて塗られる
断末魔の黄色い歓喜
小手先がなく、ひとつひとつの挙動がずしりと重い分、身にこたえてしょうがない。まして、表面をさらっただけの浅知恵はこのショップに関しては皆無で、カスタムカルチャーに関する造詣の深度はかなり遠いところまでに及んでいる。
でも、そんなオタク的素振りは一切見せないのが店主菊原さんのスマートさであり、思慮深さだ。
当時のアウトローMCが愛でたスタイルをベースにしたチョッパー。しかし、それをそのままカタチにするのでは芸がない。自分色を挿し入れることで無二なる威光を放ち、この手のスキモノたちの大切な部分を容赦なく刺激している。
定番で押さえるところは押さえた上でのプライムスタイル。そのぱっと見でのポイントでいえばエンジンの黄色いシリンダーだろう。
まずこの系統のチョッパーならシリンダーを赤や黒のままやり過ごすのが慣例だが、そこを氏が昔見たアレンネスの黄色いナックルモーターを想起してアクション。当時「いつか機会があったらやってみたいな」という想いを具現させた。
次にフレーム。これも通常ならレプリカフレームやハードテイルに手を出しがちだが、パウコ製の1インチストレッチのフレームを選択。そしてフレームやガスタンクに始まる外装には、フレイムスラインにヌードトランプを抱合。こうしたちょっとした感性の折り重ねが、当時の雰囲気を意のままに手繰り寄せている。
一方、こうなるとブレーキは前後ディスクでマフラーも左右2本出しショットガンといきたいところだが、氏にかかればキャストホイールと油圧ドラムの絶品コンビネーションで、マフラーは2イン1のフーバーという食通ぶりだ。
純正インナーを加工したプライマリーカバーとプロクラッチによる車体左の粋なパーツチョイスも捨て置けない箇所。だが、ハンドル中央に収納した模造警棒や、ハンドレバーとシートから垂れるフリンジといった王道的アクセントがまたふわりと、かの時代の空気感を心地よくなびかせている。
「うーん、どうなんでしょう。最近ちょっと倉庫に入れっぱなしだったんですけど、なんか久しぶりに見たらやっぱりカッコいいですね(笑)」
― 世界は、無秩序で、無慈悲で、競争と暴力に満ちている ― そんな過ぎし日のアウトローが生きた時代の、すぐ傍らにいつもあったチョッパーへのオマージュ。
決して順番が逆になることなく、あくまでも敬意ありきのチョッパービルドゆえに、菊原さんの仕事には急所に触れるものがある。
HARLEY-DAVIDSON FL 1970 DETAIL WORK
HANDLE
ティラーバー中央に当時の焼き増し的ハンマーではなく模造警棒を収納。フリンジをアクセントに効かせた。
GAS TANK
中央をくぼませてそこにヌードトランプを配置。全ての箇所の絵柄5枚はロイヤルストレートフラッシュである。
FRAME NECK
ネック周りにガセットプレートを鉄板で製作。そこに同じくヌードトランプを飾る。オイルフィルターもポイント。
ENGINE
記憶に留めたアレンネスのナックルモーターを辿り黄色に化粧。ロッカーカバーとシリンダーフィンを加工。
PRIMARY COVER
プライマリーカバーは純正インナーを改作。プロクラッチを合わせ、シフトチェンジはリッチモンドスタイル。
REAR FENDER
フェンダー両脇に鉄板を貼りアールを付けて成形。そこにドリルドを入れた。フリンジシートは埼玉のスカンク製。
BUILDER’S VOICE
BOOTLEG
住所 | 埼玉県川口市東領家4-19-4 |
---|---|
電話 | 048-452-8328 |
FAX | 048-452-8328 |
SHOP | BOOTLEGのショップ紹介 |
営業時間 | 10:00 ~ 20:00 |
定休日 | 月曜日 |