
H-D EL 1939
MC CATS
一冊の本が繋いだチョッパーと
ハイブランドとの予期しない邂逅
九州にチョッパー屋は数あれど、そんな中でもシーンの急先鋒は誰か? と問われれば、『MC CATS』郡(こおり)さんの名を挙げる者は少なくない。そんな氏が昨年の横浜ホットロッドカスタムショーに持ち込んだブランニューをここに紹介したい。
このマシン、実は郡さん自身の所有だ。モーターは同店初となるナックルヘッド。製作の経緯を聞いた。
「うちのお客さん、20代の若い子が多いんです。若い時に300万とかの買い物ってリスキーじゃないですか。だからこういう仕事してる僕自身がそういう車両を買うことをビビってたら説得力ないなと。
僕がナックル乗ってたら若い子が『ショベル乗る!』っていう勇気になるかなって。もちろん、ナックル乗ってみたかった、触ってみたかったってのもありますけどね」
かくして造り始めたナックルヘッドチョッパーには、明確なコンセプトがあった。
「リスペクト・フォー・ティファニーです。ティファニーって、20世紀初頭に花瓶とか陶器類を作っていた時代があって、それが載った本にこんな色の花器があったんです。その色とシェイプがイメージにフィットしました」
車体を彩る朱のような赤に、そんな邂逅(かいこう)があったことに驚かされる。言葉通り、見せてくれた図録のようなその本には、確かにこのマシンに似た妖艶で女性的なフォルムの美しい花器があった。
それらを踏まえつつ、車体のディテイルを見ていこう。
フレームは1930’sのレプリカ。不要なステーをカットしたのち、ネックやダウンチューブ、リアアクスルなど随所に同店にとっては初めてというモールディングを施した。
「昔の写真に出てくる“ヌルッ”としたフレームが好きで。この年代の雰囲気にはマストだと思いました。それにペイントやピンストの見せ場も増えますしね」
ホイールのセッティングはF21/R19という、MC CATSの必勝パターン。ナローな6インチフロントエンドと19インチを履くリア周りにより、細身なボディラインを演出している。
ピーナッツタンクには丸棒でエッジを立て、リアフェンダーは1960’sチョッパーへの憧憬を感じさせるスクープフェンダー然とした造形に仕上げるなど、外装にも手抜かりはない。
アメリカを代表するハイブランドの歴史から思わぬ形で派生したナックルヘッドチョッパー。
「タンクやフェンダーにはこだわりました。この造形は……自分で見てもついニヤけちゃいますね」。気鋭のチョッパービルダーは、そう言って愛馬を自賛した。
(写真・文/マツモトカズオ)
HARLEY-DAVIDSON EL 1939 DETAIL WORK
FRONT END
詳細不明のヴィンテージ41Φナローフォークに、21インチのスプールハブをセット。究極にシンプルな外観だ。
GAS TANK
タンクに丸棒を溶接してモールディング。ネックには陶器の修理法である金継ぎをイメージしたピンストを配す。
TIFFANY & CO.
このマシンの根幹であるテーマ「リスペクト・フォー・ティファニー」をタンクに刻む。ORVIS ONEの仕事だ。
CARBURETOR
キャブはBキャブをチョイスする。1930’sのマニホールドを加工、アダプターを付けて設置。点火はマグネトー。
SUICIDE SHIFT
ロッカークラッチを流用したスーサイドクラッチ。シフトノブはティファニーのジュエリー感に合わせ真鍮で製作。
REAR FENDER
リブフェンダーを2枚重ねして造形したフェンダー。フェンダーステーも表にボルトを見せないこだわりの部位。
BUILDER’S VOICE
MC CATS
住所 | 福岡県福津市中央6-6-16 |
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電話 | 080-3371-3862 |
SHOP | MC CATSのショップ紹介 |
営業時間 | 10:00 ~ 19:00 |
定休日 | 月曜日 |