H-D FLH 1982
INFINITY,
二重の詰めで迫る
フィフティーズボバー
フロント周りを始め、ある一定のボリュームを持たせつつも、追い込める限りナローなフォルムにしつらえた一台だ。そして、創作に当たって指針に掲げたのは『フィフティーズボバー』。いまやコンパクト&ナローなマシンを愛でる全国のファンが充血した目を向ける『インフィニティ』だが、作り手の土野さんはそんな外野の注目度を知ってか知らぬか、変に勇み立つことなく至っておだやかだ。
「1950年代にハーレーダビッドソンがメーカーとしてこういうモデルを出してましたっていうイメージです。それが最高にカッコいいバイクというので常にテーマとして考えてます。以前務めてた先からずっと教わって来てることでもあるんで」
かつての修行先だった千葉県『シュアショット』で吸収してきた玉泉は自身の体内に連綿と流れ、その意志を純度高く受け継ぎ、朝に晩にブラッシュアップしている。カスタムテイストをあまり打ち出さず、当時大量生産されたであろう雰囲気を狙って製作したのはそうした学びの園から来たものだ。
ナロースタイルへの執心も同じく修行先からはぐくんだもので、それが氏の中で美学として成立したものだと言う。どのバイクを手掛けるにしてもガスタンクを細くデザインし、全体を呼応させていく手法は、同店のスタイルとして確立されてきた感がある。
「ナローといっても僕が作りたいバイクってレーサーっぽい雰囲気のものが多いんです。ボードトラックレーサーとか、今回はボバーですけど紐解けば結局レーサーなんで。やっぱり細く作るのと、それぞれのクリアランスを詰めて作るのは大切にしてます」
トリッキーな軌道を描く左出しマフラーは、車体内側へと可能な限り詰め寄せて設置。ハンドシフトリンケージなどの可動域を確保しながら、空いた隙間を埋めていく作業が各所でとり行われている。また、ガスタンク容量の少なさを補填するため既存のオイルタンク位置を予備のガスタンクとし、オイルタンクを左側フレーム下部へと移す対策は同店の十八番で、この際も当然クリアランスの『詰め』に隙は無い。
他にも、ディテイルの完成度を追求した溶接ではないロウ付け処理や、’50年代という時代考証を踏まえたプラスを用いないマイナスネジの採用など、クリアランスの詰めも去ることながら全体の詰めにも不足はない。
そしてそこには、気持ちがふわっと開くのに、芯のところはきゅっとすぼまるような、なんとも言えない凛々しさが浮かぶ。
HARLEY-DAVIDSON FLH 1982 DETAIL WORK
FRONT FORK
フォークはハンバーガードラムブレーキに対応したIKワークス製。鉄の風合いが活きたフロント周りを描出する。
GAS TANK
スポーツタンクを加工。平面部分を叩きだして丸みを添えて細くまとめる。予備タンクはオイルタンク位置へ。
ENGINE
ストックモーターにEキャブとFORK製カバーを装着。フットコントロールはワンオフでパーカライジング処理。
MUFFLER
インパクトのあるマフラーは左出しとし、極限まで内側に寄せてマウント。シートは’50年代をイメージしたもの。
REAR END
フェンダーは汎用を18インチに合うよう改良。ステーはフラットバーをカットしてフライスで肉抜きして成形。
OIL TANK
プライマリー後方の三角型ボックスがオイルタンクで、既存のオイルタンク位置は予備のガスタンクとして使用。
BUILDER’S VOICE
INFINITY,
住所 | 埼玉県入間市狭山台4-19-9 |
---|---|
電話 | 04-2936-6876 |
FAX | 04-2909-9272 |
SHOP | INFINITY,のショップ紹介 |
営業時間 | 9:00 ~ 18:00 |
定休日 | 不定休 |