H-D XL1200S 1996
CREEK MOTORCYCLE
角にまみれた
暗闇のスリラー
ここまでのスポーツスターのチョッパーにはそう簡単にはお目にかかれない。一見爽やかなホワイトカラーに目がいき、『上品なスポーツスター』とだけで片付けてしまいそうになるが、よくよく見れば、とんでもない。角パイプとモールディングで構築されたそのフォルムは、見るほどに費やされた労力が透けてのぞくかの大作風情だ。しかも、ごちごちにやり過ぎているのに全体の均衡がぴしゃりと整っている。
神戸の名門『エースモーターサイクル』で吸収してきた厳秘の汁ものを、完全に自分のものとして咀嚼(そしゃく)し、ここぞとばかりに射貫いている店主だ。元は『エース』時代からの安田さんの愛車でもあったこれは、足かけ7年以上にもなるメモリアルチョッパーである。
「最初になんかコフィンタンクを作ってみたかって作ったら、他のところは『角』でやったら良いんちゃうかって徳山さん(※エース代表)に言われて。それでコフィンタンクだけはもう7年前ぐらいに作ってたんです(笑)」
しばらくは製作から離れていたが、ここに来て新しいオーナーも付き、一気に完成に至ったチョッパーだ。1970年代のチョッパーシーナリーを養分にして、鈑金加工が全域に渡って白熱。成形した鉄板を、フレーム外周や各パーツとのつなぎに地道に貼り合わせていき、つるりとクリーンに仕上げられた。
「ほんまにメチャクチャ鉄板貼っていった感じですね。ノーマルフレームのカタチだけ活かして全部『角』にしたっていう。こういう作業は苦ではないんですけど……、でもまあしんどいですね(笑)」
ガスタンクからリアフェンダーへと続く角モールディングに始まり、フレームダウンチューブからオイルタンク外郭までをひと通り角デザインでデコレーション。それはマフラーやハンドルの造形までに徹底され、付け入る隙がない。加えて、リアフェンダーとテールライト、シートの三位一体となったディテイルなどは痛快なほどの収まりの良さだ。
本人自らが話すように、大変だったのはすべてを『角』にすることだった。モールディング然り。パーツ造形も然り。そしてそれらは、やり出した当初は最終形が見えてない状態で、ただひたすらに手を動かしていく中で徐々に輪郭を浮かび上がらせたと言う。
暗闇の全力疾走ほどこわいものはない。しかし、そこで心折れることなくゴールまで駆け抜ける意気地もそうだが、一糸乱れないプロポーションにまとめ上げてくる感性が最もスリリングだ。
HARLEY-DAVIDSON XL1200S 1996 DETAIL WORK
HANDLE
ヴィンテージライザーにワンオフしたハンドルを装着。デザインは全体に踏襲される『角』タイプとされた。
FRONT FORK
一般的なφ35のフォークをわずかにエクステンド。フォークカバーとスタビライザーは単一で製作したもの。
GAS TANK
一番初めに手掛けたコフィンタンクは約7年前に成形。淡いカラーのフレイムスは店主自らの手で描かれる。
DOWN TUBE
徹底したモールディングはフレームダウンチューブの造作を見ても明らか。レギュレーターが見栄え良く収まる。
MUFFLER
マフラーも角デザインのスクエアタイプで、リジッドバーも一品で準備。オイルタンク外郭のフレームにも注目。
REAR FENDER
フェンダー、シート、テールライトが混然一体となったリアビュー。手抜かりのない作り込みが一体感を生む。
BUILDER’S VOICE
CREEK MOTORCYCLE
住所 | 兵庫県神戸市兵庫区小河通5-1-201階ガレージ |
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電話 | 080-4233-9261 |
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定休日 | 火曜日 |