クリークモーターサイクル CREEK MOTORCYCLE 安田裕哉 Yuya Yasudaのインタビュー

CREEK MOTORCYCLE

安田裕哉 Yuya Yasuda

March 9th, 2022

兵庫県神戸市。19世紀の開港以来、日本の玄関口として世界と交易を続けてきた歴史を持ち、風光明媚な観光都市としても知られている。前後に海と山が迫る地形はバイクでのんびり流すにもワインディングを攻めるにも過不足なく、ローカルのモーターカルチャーを豊かに育んできた。日本屈指のカスタムの祭典『ニューオーダー・チョッパーショー』を擁するシーンの一大震源地であることは周知だろう。

その地に根差し、我が国のカスタムシーンを長きに渡り牽引し続ける重鎮エースモーターサイクルにて技術とセンスの研鑽を積み、4年前に独立を果たしたひとりの若手ビルダーがいる。安田裕哉、クリークモーターサイクル主柱である。

口数は少なく、己を飾ることをしない朴訥とした人柄ゆえ自らを売り込むことは苦手とするが、エースの正統たるチョッパービルドの才覚は確か。不良感漂う往年のアウトロースタイルを宝伝する気鋭ビルダーの秘められし野心に迫りたい。

(写真・文/馬場啓介)

クリークモーターサイクル CREEK MOTORCYCLE 安田裕哉 Yuya Yasudaのインタビュー

バイクというよりも
チョッパーに惹かれた

ー ではまず、安田さんがバイクに興味を持ったのっていつ頃です?
初めてバイクに……高校生くらいですかね。友達のお兄ちゃんがスティードをロングフォークにしたやつに乗ってて。
ー そういう悪っぽいのに惹かれた辺り、当時は不良だったとか。
いや、全然。不良ばっかりの頭悪い高校でしたけど、自分はそんなでもなかったですね。 そのスティードに影響を受けて、すぐ原付免許取ってエイプ50買ったんですよ。で、それに乗ってましたね。やっぱりミッション車が良かったんで。
ー そのエイプはイジってたんです?
はい、自分でやってましたよ、スイングアーム伸ばしたりとか。キットで売ってるものを組み替えて、みたいな感じですけど。
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憧れを追い求めた
我流のボルトオンカスタム

ー エイプの後は?
中免を取ってエイプを売って、バルカンの400を買ったんじゃなかったかな。少しチョッパーみたいな感じにしてました、フロントに21インチを入れたりとか。ボルトオンで出来る範囲の地味なカスタムでしたけど。
ー 我流ですか?
そうですね、まだ雑誌を見たりとかしてなくて、何かを参考にしてとかではなかったです。そのお兄ちゃんのスティードのスタイルに憧れてって感じでした。それを3年くらいですかね、専門学校に行ってからも少し乗ってたんで。
ー 専門学校はメカ系の?
ホンダです。別にバイクを仕事にしようとは思ってなかったし、やりたいこともなかったんで、とりあえず四輪の整備士になろうかと。近所にトヨタの学校もあったんですけど、そっちは学力的に全然入れなくて(笑)。
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ー 整備士学校時代にバイク遍歴に変化はありました?
特に、ですね。カブに乗ったりはしましたけど。卒業してハタチのときにエボスポ(※エボリューションエンジンのスポーツスター)を買いました。「バイクいっぱい置いてるし」ってレッドバロンに行って、なんとなくハーレーが欲しかったんで、そこにあったエボスポを。基本的に知識はゼロでした(笑)。
ー それがハーレーとの出会いだったわけですね。そのエボスポって……。
(※壁際に置かれたカスタム途中のローリングシャシーを指差し)あれなんですよ。でもカスタムし出してもう5~6年になりますけど、あの状態のまま放置しちゃってます。
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友人の一言がつないだ
エースモーターサイクルとの縁

ー カスタムというものを意識し出したのは?
その頃はまだ全然で。周りにバイク乗ってる友達が誰もいなかったんで、ひとりでただただイジって走って。外から知識が入ってくることがなかったですね。
ー その後、何があって今の道に?
卒業した後は整備士としてビーエムのカーディーラーで働いてたんですけど「全然おもんないな」ってずっと思ってて。で、そのとき友達4人くらいでシェアハウスに住んでたんですけど、自然と「これから人生どうする?」みたいな話って出るじゃないですか(笑)。それで僕が「やっぱりバイクやりたいねん」って言ってたら、ひとりのやつが「神戸やったらナイス(※ナイス! モーターサイクル)とエース(※エースモーターサイクル)ってとこがええらしいで」って調べてきてくれて。
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ー 関西のカスタムシーンを牽引する二大巨頭。
そうなんですよ。でも知識がなさ過ぎてどっちも知らないんで(笑)、とりあえずその週の内にエースに行ってみて「バイトさせてほしい」って伝えましたね。
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知識ゼロで飛び込んだ
ワンオフカスタムの世界

ー じゃあ始めのうちはディーラー仕事で休みの日だけバイトで?
週一とか週二とかですね。バイトというか「来るんやったら来てええよ」って感じで、何もせずただ徳山さんが作業してるのを見てるだけでした(笑)。たまにパーツ磨きをしたりとか。それが1年くらい続いたんかな。初めてガチでカスタムしているのを見たんで、衝撃を受けました。
ー 鉄を切った貼ったしてバイクを作ってるわけですもんね。しかもトップビルダーの徳山さんですし。
徳山さんの存在も、エースがどんな店かも知らんかったんで。知ってたら逆に行きづらかったかもですね。ホンマたまたま一発目に行った店がエースやったっていうだけで(笑)。
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ー それからディーラーを辞めて、がっつりエースに。
エースに先輩がひとりいたんですけど、その人が独立するってタイミングで。車検とかから始まって少しずつやらせてもらえることが増えていって。
ー エースイズムみたいなものって自分では染み付いていると思います?
どうなんでしょうね……(※しばし思案する)。自分では意識したことはないですけど、ホンマに知識ゼロで入ったんで影響されるところはそこしかないわけで。ナイスとか神戸の他のショップのバイクを見るようになったのも、エースで働き始めてからですしね。
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鈑金から塗装まで
信じたのは自分の腕

ー クリークも工作機械が少ないところなんか、道具に頼らないエース譲りのやり方ですよね。
そうですね、徳山さんはセンスの人なんで。そのセンスを盗もうと思ってた時期もありましたけど、ブッ飛んでるじゃないですか。もう凄いんで、あんな発想は出てきませんし、盗めるもんじゃなかったですね。
ー ここにある最低限の機械でいわゆるワンオフパーツはひと通り全部作れるって感じですか?
でっかい旋盤がいるときはエースに借りに行ったりはしますけど、基本的には。他のショップさんって機械凄いですよね。エースってホンマにそういうのないんで、最近になって知った機械もめっちゃあるっすよ。「これあったら一瞬やん」みたいな(笑)。
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ー 作業はほとんど自分でやられてますよね。
メッキとかシートの革張り、内燃機は外に出しますけど、それ以外は自分ですね。エースのときからそうだったんで。ごっつい車両やとホンマ何日も延々とパテやってることもありますね(苦笑)。
ー 完全に元が取れてないような気がしますけど(笑)。
それこそエースのときからの流れで外注って発想がなくて。入って結構すぐの頃から徳山さんに教えてもらってペイントもやってましたし。作業自体はパテなんかも苦ではないんですけど、ホンマに時間は取られるんで効率はだいぶ悪いっすよね。
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ー ペイントも安田さんが?
カスタムの中で結構大事な部分やと思ってて、それこそ外注にどう伝えたらいいのか分からないんで。他のショップさんとか、頼んで全然イメージと違うもん上がってきたらどうしてるんやろって思います。
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若い客層を取り込み
神戸の街の活性化を

ー エースには何年いたんですか?
フルで入るようになって8年……ですかね。で、独立してクリークが今、4年目とかです。
ー 今はSRも力を入れてやってますね。
400もやらないとやっぱり若い子たちにはなかなか。まずはバイクに乗ってもらわないと。いきなり大型免許取って何百万もローン組むって大変ですから。ウチのお客さんは中免取り立てとか、まだ教習所に通ってるって子も結構いますよ。
ー 客層ってどんな感じです。
20代が多いですね。ハーレーに乗ってる人は30代40代ももちろんいますけど、基本的には若いお客さんが多いです。
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ー 扱う車種はハーレーとSRだけですか?
そうですね、他の車種が来ると申し訳ないですけど断ってます。年式もインジェクションになってくると出来ることはやりますけど、チューニングとかは得意な他のお店に行ってもらいますね。……なんやったらウチが扱う車種に乗り換えを勧めます(笑)。
ー 安田さんの生まれ育ちはこの辺りのローカルです?
そうですねギリギリ神戸市って感じのエリアです。だから神戸のカスタムシーンを盛り上げて行こうって気持ちはありますよ。それもあって若い子が入って来やすいようにってSRやってますし。
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廃れることのない
普遍的不良スタイル

ー 安田さんのカスタムの根底に流れているものって何でしょう?
‘60~’70年代の不良感あるチョッパーですね。アウトローバイカーが乗ってたような、そんな感じが好きですね。めっちゃキレイに作られたバイクとか見ると「凄いな」とは思うんですけど、僕は荒っぽい方が好きです。
クリークモーターサイクル CREEK MOTORCYCLE 安田裕哉 Yuya Yasudaのインタビュー
ー 往年のチョッパーが好きということですけど、パーツに関しては「ヴィンテージじゃないとアカン」ってこともなさそうですね。
そうっすね、そっちはあんまり興味ないですね。カッコいいデザインのものがヴィンテージでしかなければそれを使いますけど、別にヴィンテージってことにこだわりはないです。同じように純正品とかレプリカとかにもあんまり興味ないです。……興味ないというか知らんというか(笑)。お客さんの方が知ってますね。
ー 「ウチの売りはこれ」ってのはどこでしょう?
……何でしょう……(笑)。そんな、めっちゃキレイに作るのは出来へんので、荒っぽくはなりますけど、さっき言った好きな年代の雰囲気を出せるようにっていうのは気を付けてますね。
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走る楽しみは
いつまでも色褪せない

ー 今、自分のバイクっていうのは?
この黄色いSRに乗ってます。12月のホットロッドカスタムショーに出展して、1ヶ月くらいFor Saleにしてたんですけど、試乗がてら通勤に使ってたら楽しくて「このまま乗っちゃおう」って。ホンマは売り物やったんですけどね(笑)。
ー キャンプに行かれたりしてますけど、あれはキャンプが好きっていうより走りたくてって感じです?
キャンプはキャンプで好きっすね。なので自然と遠出ができるのを前提にしたチョッパーを作ることが多いです。この黄色のSRのシッシーバーも自分がキャンプに行くときに使うデカいバッグに合わせて長さを決めてて。完全に自分仕様ですね。
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ー 職業柄、仕事としてめちゃくちゃバイク乗るわけですけど、嫌になったりとかはないもんですか?
それが散々バイク試乗した後でも、アレに乗って帰るときはやっぱり楽しいんですよ。バイクに乗るのはホンマ好きですね。別にスピード出してなくっても楽しいです。どれだけ寒くても乗りますし。
ー 通勤手段にクルマが使えてもバイクですか?
ですね、クルマよりは断然バイクです。家が山の方なんで、冬場の朝なんかシートがバリバリに凍ってたりするんですけど(笑)。
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相手の要望と
スタイルの両立

ー カスタムショーにも精力的に出展されてますけど、そこにはどんな思いがあるんですか?
まぁ言うてまだ4年目なんで知ってもらわんことには。どの業界もそうでしょうけど、やっぱり上の人たちは強いじゃないですか。その中でなんとかやっていかなアカンので。
ー かと言って何でもやるって訳にもいかず。
そうですね、他店のカスタムの写真を持ってきて「これと同じに」って言われても「だったらそのお店に行った方が良いですよ」って断りますし。でもまだ完全お任せってオーダーも中々ないんで。だから難しいですね、お客さんの要望を聞きつつ自分のスタイルを出していくっていうのが。
クリークモーターサイクル CREEK MOTORCYCLE 安田裕哉 Yuya Yasudaのインタビュー
ー 今後の展望ってありますか?
そうですね……。オリジナルパーツとかも今ちょくちょく作っていってるんで、そっちも。まだキックペダルとハンドルくらいですけど、エアクリカバーとかやってみたいのは色々あります。
ー カスタムショーに関して言えば次は名古屋開催のジョインツでしょうか?
そうですね、新作も出せたらって思ってますけどね。
ー では「新作に期待していてください」という感じで締めさせてもらっても良いですね(笑)。
いや、新作出せるかは微妙なところですね。出来れば持っていくつもりはあります(笑)。でも今年中にあのエボスポを仕上げてどこかのショーには出しますよ。

CREEK MOTORCYCLE

クリークモーターサイクル CREEK MOTORCYCLEのショップ外観
住所 兵庫県神戸市兵庫区小河通5-1-201階ガレージ(Google MAPを開く
電話 080-4233-9261
SHOP CREEK MOTORCYCLEのショップ紹介
営業時間 11:00 ~ 20:00
定休日 火曜日